「伝統の」といううたい文句で語られる高松宮記念杯。
純粋に競技としての格式という観点では、日本選手権競輪が最高峰といえるでしょう。しかし、高松宮記念杯には長い歴史と伝統があります。1950年に高松宮宣仁親王から賜杯を受け、「高松宮杯競輪」として創設されたことに始まり、その後、時代の変遷とともに開催形態や開催地を変えながらも、「高松宮記念杯競輪」として現在まで受け継がれてきました。
競輪界は日々変化していますが、その年の勢力図やトップ戦線の流れが見え始めた時期に開催されるのが高松宮記念杯でもあります。
今大会の主役は、やはり地元近畿勢。そして中心となるのは地元のダービー王・古性優作でした。順当に勝ち上がれば脇本雄太との連係も見えてくる状況でしたが、それは古性にとって諸刃の剣でもありました。全日本プロ選手権以降の脇本がどこまで状態を戻しているか。その見極めもシリーズの大きなポイントだったように思います。
初日は堅い決着が目立ちました。特別選抜予選が設けられていないこともあり、実力差が結果に表れやすかった印象です。しかし2日目は一転して波乱含みのレースが続きました。上位陣が位置取りにこだわらなかったレースも多く、一次予選ながら力と力がぶつかり合う激しい戦いが目立ちました。
近年はレースの流れを重視する先行が増えていますが、トップクラスの先行選手には先行への誇りがあります。その気持ちが各レースに色濃く表れていました。
3日目で一次予選が終了。GⅠトライアルを見ていて常々感じるのは、勝ち上がるだけなら無理をせず着をまとめる選択肢もあるということ。一方で優秀競走に進出するには、それなりの勝負が必要になります。
前半3日間を精神的に余裕を持って過ごし、4日目から勝負に出るのか。それとも優秀競走進出を狙って初日から全力で戦うのか。ただし、積極的に勝負しても必ず優秀競走に乗れるわけではありません。逆に流れ込みでも展開に恵まれれば上位進出は可能です。選手それぞれの考え方やファンへの姿勢が表れた一次予選だったと感じました。
4日目は公平な3着権利による勝ち上がりで概ね順当な結果となりました。青龍賞、白虎賞といった優秀競走は着順が非常に重要です。準決勝進出は2着までが優位で、3着にはわずかな枠しかありません。同着順なら一次予選の成績も影響するため、準決勝を2着で通過するか3着で通過するかでは大きな差があります。
準決勝を振り返る
9Rは中野慎詞が早めの先行。3番手に眞杉匠が入り、この時点で眞杉に展開が向いたように見えました。しかし3コーナーの攻防で勝負は大きく動きました。番手選手がさばけるタイプであれば差し込みも可能な展開でしたが、わずかな判断の差が結果を分けました。
10Rは取鳥雄吾がライン重視の突っ張り先行。その結果、犬伏湧也にとって絶好のカマシ展開となりました。
11Rは新山響平が突っ張り先行。郡司浩平が中団にいても引かなかった姿勢は見事でした。郡司も冷静に対応していましたが、番手絶好となった阿部拓真は「止める」よりも「出させない」という意識が強く出たように見えました。
12Rでは山崎賢人が先行を選択しましたが、もしその覚悟であれば後方からの組み立ての方が良かったようにも感じます。結果的に近畿勢に有利な流れとなりました。
決勝展望
決勝は細切れ戦となりました。
勝ち上がりシステムや競走スタイルの変化により、近年は細切れ決勝が増えています。今回はラインこそあるものの、全員が自力で戦える機動型という珍しい構成でした。
そして、このレースは寺崎浩平の動きが優勝の行方を左右すると見ていました。
展開予想
スタートは犬伏ライン、郡司ライン、近畿ラインの順を想定。単騎の山田庸平と眞杉匠は位置取り次第。新山響平は後方からの組み立て。
まず寺崎が犬伏を押さえ、犬伏は下げる展開。その後、郡司ラインや山田、眞杉も上昇してきます。
寺崎は一度でも流れを切らされると苦しい展開になります。基本的には流れを見ながらレースを進めるタイプです。
その場合は犬伏が叩いて先行。ホームカマシになれば犬伏と河端朋之の争いになると見ました。現状、犬伏のホーム先行を力でまくり切れる選手はほとんどいません。
一方で寺崎が主導権を維持できれば、古性優作の番手戦が大きく浮上すると予想しました。
車券推理予想
2-9=1・5・4
2-1・5・4-1・5・4・6
2=3-9・5・8・4
3=8-2・4・5・1
結果
2-6-3
3連単 347.7倍(122番人気)
レース回顧
前受けは郡司ライン。続いて近畿ラインに山田庸平が続き、その後ろが犬伏ライン。眞杉匠、新山響平の順で周回しました。
まず犬伏が寺崎に蓋をしながら郡司を押さえます。ペースは速かったものの、本格的な仕掛けには至らない状況でした。
そこを寺崎が流れを止めることなく叩きました。山田も続き、犬伏は4番手へ。
最終ホーム過ぎ、犬伏は後続の動きを確認します。その間に古性が絶妙な車間を切り、番手としての態勢を整えました。
犬伏は十分な助走を取れないまま仕掛ける形となり、古性は番手から完璧な対応。4コーナーから抜け出して優勝を決めました。
犬伏はゴール勝負を見据えた組み立てであり、最初から先行一本ではありませんでした。しかし4番手という絶好のまくり位置を得たことで、逆に後続の動きを気にし過ぎたようにも映りました。
この時、古性が行った車間切りが最大のポイントでした。車間が空けばスピード差が生まれる。その瞬間に犬伏が仕掛けていれば、古性も難しい対応を迫られたはずです。
しかし犬伏は後続確認に時間を使い、仕掛けのタイミングを逃しました。この判断が勝敗を分けた最大のポイントだったように感じます。
古性優作は先手ラインの番手を回れば確実に勝機をものにする技術と判断力を持っています。だからこそ、このレースはタイミングが全てでした。
古性は念願の日本選手権を制し、さらに地元開催の高松宮記念杯も制覇。まさに円熟期を迎えたと言えるでしょう。周囲を自然と味方につける求心力と、レースを支配する存在感は現役屈指です。
今後もタイトル量産が期待されるだけに、その動向から目が離せません。