日本選手権競輪、通称ダービーは9年振りの名古屋での開催。過去4回名古屋で開催されていますが、そのうち3度村上義弘が制覇している大会です。あと1回は日本選手権の前身、全国争覇競輪で1950年に宮本義春さんが優勝と記されています。勿論、私の生まれる以前の競輪創成期時代です。
そこからオールスター、全日本選抜、高松宮記念杯などが開催されてきました。ここ数年はGⅠの開催がなく、久々のダービーを迎えた名古屋競輪場です。
日本選手権競輪は読んで字の如く、日本一の競輪選手を決める大会です。GⅠでの頂点の大会です。
今年はここに入るまで近畿勢の活躍が目立ち、全日本選抜では脇本雄太と寺崎浩平のワンツー。そして多くの近畿勢が準決勝、決勝と勝ち上がりました。
続くウィナーズカップでも古性優作が制し、近畿勢の勢い鳴り止まずと言ったところでした。そこに続くのは南関勢になりますが、春先の勢いを保っているのは郡司浩平のみに感じます。
そこに4月からS級S班に昇格した犬伏湧也。競走スタイルが確立された感もあり、持ち前のパワフルな競走に磨きが掛かってきました。
そしてウィナーズカップで古性と明暗を分けた眞杉匠も本格化しています。そこにナショナルチーム勢が加わります。
名古屋バンクの最大の特徴、バンクの軽さ。良い意味での高速バンクです。そのバンク特性も加わった、ハイスピードバトル。正に頂上決戦です。
初日は風の強い1日。バックは追い。先行選手有利な状況のなか、打鐘でかまし気味に仕掛けた選手は結果に繋げましたが、その分ホームかましの選手は不発が多い1日でした。本格先行優位。
2日目に風はおさまりましたが、やはりかまし先行より早目の先行が優位でした。高速バンクの特性が生きています。GⅠ直前にバンク改修やウォークトップの塗り直す競輪場はたまにあります。見た目は綺麗ですが、塗り立ては重いバンクです。重いバンクでは本命を背負う自力型は躊躇し、伏兵に仕掛けられ大敗する事が多いです。勝たなければならない立場だと、バンクが重いと仕掛けを遅らせるからです。逆に軽いバンクは力通りの決着が多いです。軽いが故に積極的に本命選手が動くからです。今回の名古屋バンクは元々軽いバンクで塗り直しもしていません。故に初日、2日目とコンディションは違いますが、本命サイドがしっかり勝ち上がった印象です。
そして3日目、4日目の二次予選でもその事は言えました。
迎えた5日目準決勝。3個レース共に好メンバーです。まず9Rは新山響平対太田海也。新山がいつも通りスタートを取り突っ張り。太田に叩かれるもすかさずイン粘りに転じ、競り勝ち2コーナー番手まくり。見事な新山の立ち回りでした。まくられた太田も果敢な先行は素晴らしかったです。
10Rは出来の良かった石原颯だが、勝負所で眞杉にインを切られた。仕掛け易くなった深谷知広が先行。眞杉は3番手におさまる。眞杉は結果2着だが、勝負所をしっかりおさえた。
11Rは寺崎がかけ渋っている所を、吉田拓矢が切る。そして犬伏が先行。吉田は3番手狙いだったが、飛び付けず、4番手になる。3番手に入った菅田壱道が早目に追い込み吉田も続く。叩かれた寺崎ライン番手の古性がピンチに陥ったが、後方から上手く車群を抜け出し3着。流石の古性でした。
3個レースどれも見応えのある内容の濃いレースでした。
出揃った決勝メンバーは、北日本が新山、菅田、阿部の3車。関東が眞杉、吉田の2車。南関が松井、岩本の2車。そして古性と浅井がそれぞれ単騎です。
展開予想
スタートは新山がいつも通り取り、北日本が前受け。そして1番車の古性が入り、眞杉ライン。その後ろに浅井で、南関ラインの形で周回。位置取りをまずしたい松井が後方になり新山前受けでは、松井にとっては苦しいスタート位置です。ただ松井は行かなければならない位置になったので、しっかり動けるか。動けばもがき合いになりそこを眞杉が仕掛ける。古性は北日本4番手の位置があるので、眞杉が出切らない限り切り替えないだろう。新山が合わせば、菅田と古性の争いに浅井が加わる。古性がまず仕掛け、新山の3番手阿部は外しか踏まないので、内はガラ空きになるからだ。新山が松井を行かせれば、眞杉と古性の争いか。ただ新山がこれまでやってきた誰が相手でも突っ張り続けた事はここでは生きるだろう。
車券的推理予想
1=3-842 1=8-64392 1-4-8392 3=9-1 2=8-6143
結果
9-3-1 47.9倍(4番人気)
レース経過
スタートは北日本勢に阿部、菅田と速い選手が揃っていて、しっかり前団を取った。そして古性、眞杉ライン、浅井、松井ライン。予想通りの初手の位置。青板から後方の松井が上昇するが、新山が対応する動きを見せた。そして新山が先行態勢を築く。最終ホームでは4番手の古性はびっしりだったが、眞杉が車間を切り始める。この辺は位置が後ろの眞杉なので、まくる態勢を整えだした動き。そしてバックから眞杉がまくる。古性は新山の先行を信じ、3コーナー入ってからの勝負と考えていたと思う。しかし眞杉の仕掛けで内に詰まる。そのまま眞杉がまくり切り、吉田が交わした。日本一の競輪選手に輝いた吉田拓矢で決着。
決勝は少し単調とも言えるレース展開ではありましたが、これは新山の日頃のレースっぷりがそうさせたと感じます。日本一の競輪選手は吉田拓矢ですが、日本一の先行選手は新山響平と認識したレースでもあります。そしてバックから仕掛けた眞杉の走りっぷりも立派でした。王者は古性ですが、その近くまで迫って来たとも感じます。まだまだ戦いは続きます。年末にはどんな力関係になっているかも楽しみです。
次回GⅠは高松宮記念杯です。楽しみにしましょう。