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内林久徳の「車券推理の極意」 日本選手権競輪 決勝
解説&分析 2023.05.10

内林久徳の「車券推理の極意」 日本選手権競輪 決勝

#レース予想の極意

日本選手権競輪、通称ダービー。今年は平塚競輪場での開催。このバンクは何と言っても、まず先行有利。後方に置かれた選手が届く事は考えにくいバンクです。その事は自力選手のみならず、追い込み選手が内を突いての連がらみもまず無いです。基本は先手必勝です。

昨年のグランプリは当地で開催され、脇本のホーム捲りが鮮やかに決まりました。しかしそれはある程度の条件が整わないと現実化しない結果です。その事を選手が理解した上でのグランプリ。新山先行で番手が新田。そこを崩さない限り、優勝は新田でした。それが故に番手を狙う競走になり、盲点となった脇本が捲れた訳です。その事が再現されるかでありますが、グランプリでそうなったが故に決まりにくいと思います。

そして迎えたダービー初日。やはり先手ラインが結果を残しました。特選では脇本がいつも通り後方に下げ、捲りを放ちましたが、不発です。脇本は前走に武雄記念で優勝していますが、武雄バンクは直線も長く平塚とは対照的なバンクです。昨年のグランプリのイメージと、武雄のイメージが強く脇本に残っているなら、ダービーでは苦戦するだろうと思っていました。

そして5日目、山場の準決勝。9Rは新山対眞杉の対決。新山が前受けから突っ張り先行で眞杉を合わし切った。

10Rは脇本に挑む犬伏の構図。犬伏が押さえ先行体制に入りそうな雰囲気だったが、 脇本が打鐘で叩き先行。ジャン先行の上がりタイムが脅威の10.7。新山も脇本も手堅い選択をしました。

最終11Rは深谷が橋本の動きを受け入れ下げました。橋本には山口が付いているので、 9、10Rとは違い番手捲りも想定されるだけに、深谷は突っ張ってでも駆けるべきだったと思います。最終レースなので、準決勝の流れから考えてもそうするべきだったでしょう。ホームで叩き、先行しましたが、渡邉をその気にさせた事で苦しんだと思います。そして出来の良い清水が2コーナーから捲り決着。期待された地元の郡司は清水への対応に遅れた様に見えます。落車は自身の判断ミスと、捌きの甘さが出たのでしょう。

決勝のメンバーが出揃い、三分戦プラス1の構成となりました。メンバーを見て最初に思った事は、犬伏が何が何でも先行で組み立てて来るだろう。優参したものの準決勝では自身のレースが出来なかった事があるからです。そして、それを新山が叩きに行くかです。叩き合いがあるなら脇本の連覇。なければ中団新山の捲り勝負で、脇本は苦しむと思いました。ただ脇本の圧巻の準決勝の走りがあり、早めの先行でも自信があると感じます。この場合は、犬伏を準決勝みたいに叩けるかがポイントになります。そして雨も要素の一つです。

展開予想

前受けは誰も出なければ脇本。そして新山が中団。後方は犬伏ラインになる。山口は入れるなら北日本の後ろにいたいが、車番的に後方の可能性が高い。ただ後方でも犬伏の上昇に合わせて付いて行けば入れる可能性もある。それは新山が入れるかどうかになる。北日本の後ろなら新山が脇本を一旦切るので、その上昇に合わせ付いて行けば、流れで更に切る事も可能。しかし新山に先行の雰囲気があるなら、北日本の後ろで十分である。このレースで犬伏は、やる事は一つ。脇本は基本、流動的になるので、新山がキーマン。中団獲りなら4番手が理想。山口が前にいると、 山口の動きが読み辛い上に、タイミングも遅めの選択肢がなくなり、武雄記念の二の舞になる恐れもある。山口にとっては4番手が理想で、新山の動き次第で漁夫の利もある。すんなり楽に捲れるかもです。後は脇本がグランプリの様に捲れるかである。それも全て新山次第。ただ新山が中団選択と気付いていた時に脇本はすかさず叩くなら、犬伏も新山が来ないので、ペースになっている可能性があり、楽に叩くチャンスはある。脇本の優勝は叩き合いがあった時と、楽に犬伏を叩けた時と感じる。そしてこのレースの番手は清水の可能性が高い事。清水の出来も良く、清水優勝もある。雨バンクなら更にその確率は上がる。

車券的推理予想 1=3-7985 1-9-354 3=5-7824 3-7-8524 3-8-7524

結果 4-3-2 206.4倍(69番人気)

レース経過

脇本が前受けで、枠なりに並ぶ。北日本、四国中国ラインで、最後方に山口で周回。そして犬伏が押さえに行く。その時に山口は新山ラインに付いて行くか両面策に見えたが新山が上昇しなかった。これで山口にとっては迷いとタイミングがずれなくなった。もし新山が上昇していれば、7番手に置かれる可能性も少し出た。もしくは脚を使っての4番手だっただろう。新山が脇本を切らなかったのは、脇本が引いてくれると予測した事だが、万が一もあるのと、山口の事を考えたら切った方が良かっただろう。叩き合い覚悟の雰囲気を出せば4番手に入れた。先行体制に入った犬伏は準決勝の事もあり、かなりのハイペースにもって行った。4番手山口。5番手新山。8番手脇本で最終ホーム通過。脇本はいつも通り車間を切っていたが、この時点で勝機は消えたと感じた。このバンクで犬伏の先行を8番手から捲るのは不可能。ただそれを受け入れるしかないのが脇本である。位置取りの経験もなく、他の選手も神経を使わせていない。これから犬伏の様な若手が出て来た時に対応していく課題でもある。そして新山が2コーナー手前から仕掛けた。それと同じに清水が番手捲りを放つ。もう少し引きつければ清水の優勝だったが、絶好の展開を逃す訳には行かないので、仕方なし。その結果山口にスペースが生まれ仕掛ける。佐藤が内から来ていたがスピードに勝る山口が突き抜け、優勝。単騎が味方したが、今年のダービー王である。

山口のレースは組み立てなどの評価は良くない。それが故に単騎になる事も多いです。それが幸いした優勝でもあります。しかしスタイル的には合っているのかも知れません。新田のスマートなタイプであるでしょう。

日本一の競輪選手、山口拳矢の試練はまだまだ続くだろう。

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