【8月のMVP】
松浦悠士(31)広島98期 S級S班
8月は西武園競輪「第65回オールスター競輪」と富山競輪「開設71周年記念瑞峰立山賞争奪戦」の2本を走った。両開催での松浦の阿修羅のごとく立ち回りは、当コーナー以外にも各メディアで称賛の嵐だった。
特筆すべきはオールスター決勝戦。あの脇本雄太にしかも目標がおり、2段駆けを許してしまえば他派はまったくかなわない。牙城を崩す最善の手段として分断策に打ってでた。特別戦線の決勝は選手たちが慎重になるがゆえに、ただでさえ単調になるケースが多いが、松浦はそれを許さなかった。しかも味方の誰もいない単騎で脇本本線に挑んだのだから相当な覚悟があったと察する。仮に優勝していればスーパーマンだが、それはできすぎというもの。あれだけ脚を使い2着とあれば、大健闘だった。
富山記念も痛烈な印象を残した。オールスターが1日順延した影響で間隔が詰まっている中、4日間、自力で戦い長い距離をもがき続けた。自力選手から「333バンクは短走路の割には逆に踏む距離が長くなる」というような話をよく聞くが、それはレースの始動が早まるから。決勝は青板バックから高速イン切りで好位をキープすると、容赦ない仕掛けで別線を一蹴し、平原康多との伸び比べを制して圧巻のVを飾った。吉澤純平―宿口陽一―平原康多と並んだ関東作戦を粉砕する、価値のある優勝だった。
【8月のベストレース】
奈良競輪FⅠシリーズ 8月17日最終日 決勝戦12R 近畿軍団
決勝戦に乗った7人は全員、近畿の選手。いかにも地区別あっせんと言える勝ち上がりだった。ラインは3つに分かれ、中井俊亮(奈良)-山本伸一(奈良)―三谷将太(奈良)と福永大智(大阪)―南修二(大阪)と藤井栄二(兵庫)-椎木尾拓哉(和歌山)と並んで周回が進んだ。
戦闘開始は青板バックから。藤井が目いっぱいにフカして出切ると、中井が中団に入ったが、間髪入れずに福永もスパートし中団併走となった。藤井もメイチで飛ばしており、スピードはもはや落ちる事がない。先頭で戦う3人に余裕は無さそうに見えたが、中井がアクションを起こす。1センターで椎木尾の内をすくい、藤井の番手に潜り込むと休む間もなく番手まくりを打った。
バック過ぎに地元3車が出切ると、山本は幾分、早めに踏み込み絶好V機が到来したかに見えたが、最後の最後に三谷が会心の中割りで優勝をさらった。自力選手は全員、出し惜しみせずに本領を発揮し、追い込み陣も細かな追走テクを示してそれぞれ持ち場をまっとうした。
このレースは個人の動きを称えるというよりも、近畿7人による群像劇として評価したい。いくら同地区とはいえ、慣れ合いは一切ないとの意思を示した近畿軍団による壮絶なガチンコバトルは、競輪のすごみを表すに十分すぎる一戦だった。