偉大な師匠を追いかけて
これからもずっと聞かれるのだろう。岸田のプロフィールに書かれている偉大な師匠の名前。競輪界最強の脇本雄太に師事しているのだから、どうしても取材者の関心はそこに集まる。「必ず聞かれますね。でもそれは分かっていたこと。自分が強くなればいい」と苦笑した。
実力確かな121期の新人だ。養成所ではゴールデンキャップを獲得。チャレンジデビュー戦も敗れたのは決勝で連携した番手の同期にかわされただけで、2場所目の岐阜では力の違いを見せつける完全優勝だった。特別昇班は時間の問題だろう。
「脇本さんと練習することで着実に力が付いている。特に体幹中心のウェイトトレーニングでは正しいフォームを教えてもらい、自転車への活かし方も勉強になる。週2回なんですが、きついので時間が永遠に感じるほどです。まだ弱いところがいっぱいあるので伸びしろがあると思っています」
乗っているフレームは師匠から借り受けている黒色のケルビム。「自分が乗りこなせているかどうか分からないけど」と話したが、脇本と同じ身長ということもあって乗っている姿はそっくりだ。「意識はしてない。でも、成績も似てくるといいのですが」と笑った。
大学時代は1kmタイムトライアルがメイン。「ダッシュ系」という脚力の礎はしっかりとできている。就職希望から一転、想像もしていなかった競輪選手を仕事として選んだのは、大学2年の時に一気に才能を開花させ自信を持ったからだった。そして師匠は脇本という最高に恵まれた環境にある。
「大学は1kmタイムトライアル中心だったから、ライン戦の経験がまだまだ必要。やはり師匠のように緩んだら駆けるようにしないといけない。僕は後ろに差されると思って、思い切り駆け切れてない。師匠のアドバイスをもらいながらレースを覚えていきます」。偉大な師匠を追いかけ、一歩ずつ近づく。注目のルーキーだ。