新たな刺激材料にベテランが奮起する
岡山のベテラン、石丸寛之が最近、新たな弟子を取った。これまでも山崎駿哉、近藤雄太、城戸俊潔らを指導してきた石丸だが、今回の弟子は陸上競技出身のアマチュアだという。「プロになったのは3人。以前にアマの子を弟子に取ったけど、1人はすぐに辞めました。続くかはやっぱりハートですね。図太くなきゃ厳しい。その分、今回の子はそっちの方は大丈夫だと思う。体型もいいし」と、その素質に期待を寄せている。
縁の始まりは、石丸自身も高校(玉野光南)時代に打ち込んでいた陸上競技だった。しかも新弟子とは家が近所で、家族ぐるみの接点もあるという。「家はもう目の前。しかも娘の同級生なんです。同じ高校の後輩でもあるし、そんな縁です」
しかし、競輪の世界は甘くない。脚力だけで通用するほど甘くなく、練習だけ積めば勝てる世界でもない。苦しいときに踏み込めるか。展開がもつれたときに気持ちで耐えられるか。だからこそ、石丸は「図太さ」と「ハート」という言葉を使い、自分で考え、自分で苦しみ、壁を越えていく姿勢を求める。「結局、やるのは本人ですから」。短いが、その言葉は重い。
一方で、若い選手たちと接することは、石丸自身にも大きな刺激になっている。最近では弟子との連係も増え、真っすぐな姿勢やがむしゃらさに触れるたび、自分が若かった頃を思い出す。この取材を行った日(5月14日)は、そんな思いを体現する走りだった。若手機動型が動くと、2角6番手からシャープなまくりを決めて快勝。最近は番手回りが増えているが、自力で戦う気概を示した。「あれ(まくり)は出せるけど、番手を回っているんですよ(笑)」と冗談を込めた言葉は、弟子や後輩たちへの檄であり、まだまだやれるというメッセージにも映った。
年齢を重ねれば経験は増える。ただ、その一方で、慣れや妥協も生まれる。そんな中、若手の勢いに触れることで、石丸の闘争心は再び燃え上がっている。