取り戻す戦い
元いた場所に戻るだけ――。
だが、その道のりが容易でないことは、経験者だからこそ身にしみている。
昨年は7月にイレギュラーな形でS班に復帰した松浦だが、その後は落車負傷もあり、満足に走れず地位を守ることができなかった。今年も「取り戻す戦い」からのスタートとなったが、1月の小田原決勝で通算400勝を達成するなど、ここまで3か月で4V。2月熊本「全日本選抜」でも決勝進出を果たし、確かな存在感を示している。
今年10場所目となる4月の玉野FⅠ「ガッツ玉ちゃん杯」でも、断然の主役として参戦した。
「全日本選抜は決勝に乗ったけど、内容も結果も伴っていないので。7車で調子がよくても、9車とは別物だから。正直、走りっぱなしで疲れはめちゃくちゃあるけど、走った方がいい。公営競技の選手なので、与えられたレースを休む選択肢はないです」
ケガに泣いた昨年の反省もあるが、チャンスがある限り全力投球――それが松浦の信条だ。
この開催で見せたパフォーマンスは圧巻だった。
初日特選は前受けから引いて6番手。逃げる岩本俊介―東口善朋を最終ホームからまくり、東口の再三のブロックを耐えて2着。前検日には「初日はだいたいよくないので、割り引いてもらえれば」と語っていたが、その言葉を差し引いてもインパクト十分。2日目以降への期待を大きく膨らませた。
そして準決勝。
高津晃治―佐々木則幸を連れてここも自力勝負。板垣昴の先行に対し、打鐘4コーナー5番手から反撃に出る。3番手が空いたところへ一度入り、そのまま踏み上げて2コーナーでは外へスライス。
「最終ホームで3番手が離れていたので一回入った。あれをやると吸い込まれるように加速するんです。ただ、自分はいいけど後ろが付きにくくなる。それでコーナーで外を踏んで後ろを待った」
高津の追いつきを確認してから踏み込むと、ライン3車できっちりのみ込み、ワンツースリーを決めた。
まさに芸術的ともいえるレース運び。
「調子はかなりいいですね。気になる点は、3コーナーでサドルの前の方に座ってしまったこと。サドルの見え方がよくなかった。あれだと末の粘りに影響するので修正したい」
最終日の決勝は岸田剛―東口の3番手で山田庸平と併走。内に閉じ込められて脚を削られたが、さばいてまくり、マークの片岡迪之の地元Vに貢献した。
開催直前には、地元・広島で3日間の誘導員を務めたことも話題となった。
モーニング開催で観客は多くなかったが、熱心なファンから「そのまま逃げ切れ!」(それは無理)といった声援(?)も飛んだという。
「誘導は8、9年前までよくやっていたし、最近やっていなかったから話題になっただけ。でも誘導をやるのもいいんですよ。タイムも決まっているし、感覚を研ぎ澄ませられる。レースの緊張感も味わえる。インカムがあるのでどうしても頭が上がってしまうけど、フォームのチェックもしながらやっていました。ばっちり引けましたよ」
どんな機会も無駄にしない。その姿に、一流たる所以が垣間見える。
走り続けているがゆえの悩みもある。
「弟子は4人いるけど、忙しくてなかなか見てあげられていない。ガールズも1人入る(小松梅香・132回生)けど、どうかな」
ともあれ、序盤戦を賞金ランク上位で終えたが、4月17日の京王閣初日に落車。しばらく戦線離脱が見込まれる。
それでも、昨年と同じ轍は踏みたくない。
来年2月、地元で行われる「全日本選抜」をS班として迎えるために――。
松浦悠士の戦いは、まだ続く。