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編集部コラム KEIRIN ON MY MIND
特集 2025.12.24

編集部コラム KEIRIN ON MY MIND

12月13日は場内で予想会があって、我らがラーメン店の主人・マサさんも噺家の師匠と一緒に登場。店の常連のトミさん、タナカくん、俺、それにОL3人娘も応援に駆けつけた。マサさんと師匠の出番が終了して、本日は休業のラーメン店に戻ってきた8人。マサさんがコーヒーを出してくれてひと息ついたところ。

話の口火を切ったのはトミさん。「今年の流行語大賞は、働いて働いて働いて働いて働いてまいりますだけど、俺たちは、賭けて賭けて賭けて賭けて賭けてまいりますだな」。マサさんがすぐに混ぜっ返す。「外して外して外して当たって外してまいりますだろ」。ひとつ当たりが挟まっているのがいいセンス。

そういえば、「今年の漢字」っていうのもあったな。今年は「熊」に決まったって、昨日のニュースで言ってた。それなら競輪を漢字で表すと何かな?とみんなに振ってみると、タナカくんがすぐに乗ってくれた。「競輪だから輪とか競とかはすぐ浮かぶし、脚も」。「太腿(ふともも)」と言ったのはОL3人娘の一人。太腿は二文字でしょ。「それなら腿でどう」。競輪選手の太腿周りは女性のウエストといい勝負。でも言い古された感はあるよね、口には出さなかったけど。

「風っていいじゃない?」とトミさん。うん、うまいね。自転車競技は風圧との戦いだし、なんたって選手は風になるから。

「絆は?」とタナカくん。それも納得。地区の絆が競輪の魅力。国際競技のケイリンやガールズケイリンとは違い、今の競輪はライン戦。その根幹が絆。「俺たちがここにいるのも絆?世界で一番脆弱な絆だな」と言ったトミさんと目が合って苦笑い。

横に目を移すと、今度は師匠と目が合った。師匠は何?少し間を置いて、「私は味ですかね」。これには間髪入れず、俺とマサさんが「うまい!」と反応した。

そこから師匠が立て板に水で理由を語り出す。話し出すと止まらない師匠。普段は謙虚なんだけど、我慢して、しばし拝聴。

「まずファンにとっては趣味。そして競輪競走自体に醍醐味がある。頭脳も含めて人力のみの勝負で、仲間同士で助け合って戦うし、時速60キロの中での判断やテクニックは風味や旨味があって、滋味まで感じさせる。レースを見終わったあとの後味。まあこれはよかったり悪かったりですけど、これもまたいい。車券でいいところを狙ってとったときの妙味も堪能できます。ガールズケイリン、7車立て、新人戦や来年は外国人選手のレースで味変が楽しめる。新しいもんが出てくると当然味見がてら車券を買っちゃう。競輪を運営する側もファンの車券購買意欲を高めるために番組という味つけが大事ですよね。

競輪を続けていると、ファンはだんだん味覚が鋭く深くなっていくんだけど、これが車券的中に結びつくかというと、そんなことはない。それが味噌。外れたときは渋味、苦味、塩味、辛味、酸味なんて味わったりさせられる」おいおい止まんないよ。

「選手は走り続けていくと、味が出てくるんですよ。ベテランの味、味のあるレース。それを味わうファンたち。イン粘りしたり、ブーメランで味をしめて、またやっても失敗したり、次もうまくいったり。これはファンも一緒。挟み車券などの買い方や思考方法で味をしめても、次はまた同じにはならない。それからっと…」。

師匠が暴走し出したので、タナカくんが割って入る。ナイス、タナカくん。「味といえば、福岡の原井博斗がいい味出してますよね。昨日の奈良の準決勝で落車しちゃったけど…」。        
九州といえば今年は嘉永泰斗だけど、地味ながら原井も穴党には人気がある。追い込み選手で115期の30歳。今年5月の武雄でS級初Ⅴを決めて、その後も確定板によく挙がっている。タナカくんも言ってたけど、昨日の落車で今日は欠場。初日は同県の岩谷拓磨の後ろからコースを探して1着に突き抜けていた。決勝でも確定板に挙がれる状態だと思っていたのに…。今期はもうあっせんがなく、来期になる年またぎの岸和田は走ってくれるかな。自力選手に脚光が集まるけど、着実に歩んでいるいぶし銀の追い込み選手は絶対に競輪には必要。「味」っていうのにぴったり。

さあ、伊東温泉記念の検討を始めようとしたら、ОL3人娘の一人が、「さっきの漢字なんですけど、鐘はどうですか?」と言ってきた。なるほど競輪といえば残り1周半を告げる打鐘(じゃん)を忘れちゃいけない。俺は慣れっこで感覚が薄れているけど、改めて競輪=鐘は、確かにそうだなと感じ入る。もうすぐ観客が何万も入るグランプリ。この鐘の音とともに場内がとんでもなくヒートアップする。あの高揚感、あの雰囲気はぜひ味わってほしい。

ちなみに競輪場で使う小型の釣り鐘は一般的には半鐘(はんしょう)と呼ばれている。江戸時代の町内には火の見やぐらがあり、てっぺんには半鐘がつけられていた。火事、鎮火を知らせるためにジャンジャンと鳴る音から、この半鐘は「おじゃん」とも呼ばれるようになり、その呼び名が競輪でも引き継がれていると思われる。

みなさま、火の用心。よいお年を。

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