クリテリウムに競輪選手&選手候補生が参戦!
日本競輪選手養成所 神山雄一郎所長もパレードやトークショーに登場
今回紹介するのは、栃木県宇都宮市で30年の歴史を誇るロードレースの国際大会「ジャパンカップサイクルロードレース」です。
ジャパンカップサイクルロードレース(以下、ジャパンカップ)は、1990年に宇都宮で世界選手権が開催されたことを記念して、1992年に創設。
ツール・ド・フランスなどにも出場する世界のトップチームや選手が出場することでも知られ、ロードレースの大会としては国内最高峰であるとともに、アジアでも最高位のグレードに位置づけられる、まさに世界レベルの大会です。
毎年、ジャパンカップの開催期間中は観戦に訪れる多くの自転車ファンで賑わい、宇都宮の街は活気に溢れます。

今年のジャパンカップは10月17日(金)~19日(日)の3日間にわたり開催。初日は前夜祭として出場選手が勢揃いするチームプレゼンテーション、2日目は宇都宮のメイン通りを舞台としたクリテリウム、そして3日目に本戦となるロードレースが宇都宮市郊外の森林公園で行われました。
クリテリウムは2010年から新たに設けられたレースですが、これまで競輪界からも新田祐大選手や脇本雄太選手といった、そうそうたる顔ぶれがスペシャルチームのメンバーとして参戦してきました。
今年のクリテリウムには神開一輝選手、児玉虎之介選手に加え、日本競輪選手養成所の沢田桂太郎候補生と西原裕太郎候補生が出場。
沢田候補生はロードだけでなく、トラック中距離のナショナルチームでも活躍していましたが、このジャパンカップのクリテリウムでは2019年に9位に入った実績を持ちます。西原候補生は自転車競技の強豪・鹿屋体育大学を経て、国内ロードレースチームで活動していました。現在は養成所で短距離メインのトレーニングに励んでいる2人ではありますが、どんな走りを見せてくれるのか期待されます。
また、レース後のトークショーにはクリテリウムを走ったメンバーだけでなく、今年から日本競輪選手養成所の所長に就任した神山雄一郎所長も参加し、盛りだくさんの内容に。
今回は、大会2日目に行われたクリテリウムとトークショーの模様を中心にお伝えします。

宇都宮市大通りに設けられた1周2.25kmのコースを15周、総距離33.75kmで争われるクリテリウムは、宇都宮駅から続く目抜き通りを通行止めにして行う大規模なもの。
レースに先立って、まずはパレードランが行われました。出場する選手をはじめ、宇都宮市の佐藤栄一市長や大会ゲストたちが登場し、沿道からの歓声に応えながら、コースを回ります。



いよいよクリテリウムのスタート。木戸寛JKA会長がスターターを務め、20チーム・総勢117名によるレースが始まりました。100名を超える大集団が疾走し、目の前を駆け抜けて行くさまは迫力満点です。
今年はスタートからかなりペースが速く、途中もほぼ緩むことなくハイスピードでレースは進んでいきました。


スプリンターである競輪選手にはもともと厳しいレースではありますが、前半で神開選手と児玉選手がリタイアになると、西原候補生が遅れ始め、ついに脱落。一人残った沢田候補生は後半まで集団でレースを展開しましたが、終盤で千切れてしまい、惜しくも残り2周でレースを降りることになってしまいました。
今回のクリテリウムは平均時速50.7kmという歴代でも最速のレースに。そんな高速バトルを制したのは今年のツール・ド・フランスでポイント賞「マイヨ・ヴェール」を獲得したスーパースプリンター、ジョナタン・ミラン選手でした。





レースの後は、街中のイベント広場「オリオンスクエア」でトークショーや表彰式が行われました。
一つ目の「JKAトークショー」には神山所長、沢田候補生、西原候補生とともに栃木の福田稔希選手と貝原涼太選手が登壇。地元のレジェンド、神山所長が登場すると会場から大きな拍手が上がりました。
まずは沢田候補生と西原候補生が競輪選手を目指した思いや養成所について話すと、神山所長は2人を「身体も大きく、脚力もあって優秀。期待の大きい本当に楽しみな候補生」と紹介。
福田選手と貝原選手は昨年デビューした栃木期待の若手ですが、元ロードレーサーの貝原選手は「いまだにレースではすごく緊張してしまう。まだ全然だめです」と苦笑い。今年の夏に特別昇級でS級2班に上がったばかりの福田選手は「今はレースが楽しいです。これからも積極的に仕掛けてしっかり先行していきたい」とS級での抱負を語ると、神山所長から後輩たちへ激励の言葉も。
最後に神山所長が「ぜひ皆様にも宇都宮競輪場に来て競輪の魅力を感じてもらえれば。栃木の選手たちも、来年5月にデビューする候補生の2人も、温かく見守って応援していただけたら嬉しいです。私も養成所で頑張ります」と挨拶して締めくくりました。




2つ目の「クリテリウム・スペシャル・ライダーズトークショー」には神開選手、児玉選手、沢田候補生、西原候補生が登壇。
レースの感想を聞かれ、新開選手と児玉選手は「めちゃくちゃキツかったです」「地獄のようでした」と苦笑い。沢田候補生は「少なくとも完走はしたかったのですが、やっぱり練習不足でした」と悔しがると、西原候補生は競輪選手とロード選手の違いを説明しつつ、「経験したことのないようなスピードでずっと走り続けていて衝撃を受けました」とジャパンカップのレベルの高さを実感した様子でした。



トークショーが行われたオリオンスクエアでは、競輪のブースも出展され、こちらも連日多くのお客様で賑わっていました。



「競輪とオートレースの補助事業」はものづくり、医療、福祉、研究、スポーツなど幅広い分野で役立てられていますが、このジャパンカップをはじめとしたさまざまな自転車競技大会の開催も支援しています。
最後に、沢田候補生と西原候補生に今回ジャパンカップに参加して感じたことなどお話を伺いました。

沢田桂太郎候補生
「まだ候補生の僕が、たぶん日本で一番レベルの高いクリテリウムに出させていただけるのはすごく嬉しいですし、有難いです。僕らがジャパンカップのような大会に出ることでロードのファンの方が競輪に興味を持ってくれたり、またその逆もあると思うので、お互いにいい形になっていければいいなと思います。
自転車競技を10年以上やってきましたが、色々な大会で補助事業に支えてもらっていたので、今まで貰った恩をプロになって返せるというか、これから競技をやっていく若い選手たちに対して、補助事業という形ですが自分も支援できることを嬉しく感じます。
養成所では競走訓練が始まっているので、しっかりいい成績を残して、デビューしたらすぐに名前を覚えてもらえるように、在所成績でも上位を目指して頑張っていきたいです」

西原裕太郎候補生
「ジャパンカップは観客もたくさん集まりますし、国内では一番大きなイベントといっても過言ではないので、その舞台で走らせていただけるのはとても嬉しいです。
僕も自転車競技をやっていた中で、競輪のマークをいたるところで見かけ、本当に色々な大会を支援しているんだなと感じていました。やはり補助事業は競輪の売り上げがあって、お客様があってのことなので、僕もこれからプロになったら、どうすれば多くの方に競輪場に足を運んでもらえるか、興味を持ってもらえるか、自分なりに考えて発信していけたらいいなと思っています。
養成所ではとにかく色々なことを試して、どんなレースでも対応できるような技術や脚力をつけることが目標です。強い選手になって卒業したいと思います」