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第67回朝日新聞社杯競輪祭(GⅠ)展望
レース展望 2025.11.05

第67回朝日新聞社杯競輪祭(GⅠ)展望

#グレードレース展望

 第67回朝日新聞社杯競輪祭(GⅠ)が競輪発祥の地・小倉競輪場で開催される。ガールズケイリンの第3回競輪祭女子王座戦(GⅠ)との同時開催で6日制のナイターで実施される。勝ち上がり方式は前半3日間の一次予選はポイント制で、特別選抜予選などのシードレースはなく、全員が一次予選を2走して合計ポイントが1位から9位までが4日目のダイヤモンドレースに進出、10位から36位が二次予選Aの3個レースに進出、37位から63位が二次予選Bの3個レースに進出する。ダイヤモンドレースは失格にならない限り9名全員が5日目の準決勝に進出し、二次予選Aは各レースの1着から4着の12名が準決勝に進出、二次予選Bは各レースの1着から2着の6名が準決勝に進出。準決勝3個レースの各レースで1着から3着になった9名が6日目の決勝に進出できる。10月の寬仁親王牌では嘉永泰斗がGⅠ初優勝を飾ったが、決勝戦では古性優作ひとりとなった近畿勢の巻き返しはあるのか、それとも他地区の躍進によって再びニュースターが誕生するのか、今回も見どころ満載の6日間となるだろう。もちろん大詰めとなったグランプリ出場権をかけた賞金争いにも大注目だ。

嘉永泰斗が自慢のスピードで地元ファンを沸かせる

 10月の寬仁親王牌では優勝候補のひとりだった脇本雄太が負傷によって準決を欠場するアクシデントがあったためか、決勝は四国勢が3人、中国勢が2人という近年例を見ないメンバーとなり四国勢が有利と思われたが、優勝したのは単騎の嘉永泰斗だった。もちろん競輪はラインがなによりも大事だが、トップクラスが集うGⅠで舞台が高速バンクとなれば、一瞬のチャンスを逃さずに仕掛けられる技術と勇気があれば単騎でも勝てるのが競輪の面白さだ。2023年の競輪祭では深谷知広の先行に乗った松井宏佑を差した単騎の眞杉匠が優勝、2021年の大会では単騎の吉田拓矢が新山響平の逃げを捲って優勝しており、今回も単騎の選手の一発が侮れない。
 嘉永泰斗は準決まで勝ち上がった8月のオールスター競輪から調子が上向いてきて、9月の共同通信社杯競輪では4日間勝ち星はなかったが、準決では寺崎浩平-南修二の3番手を取り切ると3着で2023年の共同通信社杯以来のビッグレース優出を果たした。迎えた寬仁親王牌の準決も自力勝負はなかったが、中団の4番手を取り切ると吉田拓矢の捲りを追いかけて3着で優出し、決勝では得意の捲りでGⅠ初優出・初優勝の快挙を成し遂げた。今回も巧みな位置取りとスピード自慢の捲りで地元九州ファンを大いに沸かせてくれるだろう。
 犬伏湧也は寬仁親王牌の準決では力強い逃げで2着に粘り、清水裕友とワンツーを決めて昨年の競輪祭以来のGⅠ優出を果たした。しかし、決勝は3車そろった四国ラインが優勢と思われたが、前受けから誘導を切らずに下がってしまったのが一番の敗因で、ピッチの上がった誘導を吉田拓矢にフルに使われて巻き返しはできなかった。寬仁親王牌終了時点で獲得賞金ランキングは12位と厳しい位置だが、昨年の競輪祭の準決は捲りの2着で突破とバンクとの相性はよく、最低でも優出を目指して臨んでくるだろう。
 松本貴治は2023年8月のオールスターでGⅠ初優出を達成するもその後は伸び悩んでいたが、今年は8月のオールスターで優出して決勝4着、寬仁親王牌では準優勝と大健闘だった。目標の犬伏湧也が後手を踏んで短走路では絶体絶命の8番手となったが、最終4角からインに切り込んで鋭く伸び2着に突っ込んでいる。優勝の嘉永泰斗から1車身2分1差と届かなかったが、個人上がりタイムはバンクレコードタイの8秒8だった。獲得賞金ランキングも10 位に浮上しており、もちろんグランプリ初出場を狙ってくるだろう。

嘉永泰斗 熊本 113期
犬伏湧也 徳島 119期
松本貴治 愛媛 111期


清水裕友が中四国の仲間たちとともに復活を狙う

 清水裕友は獲得賞金ランキング14位と厳しい位置にいるが、10月の寬仁親王牌の準決では犬伏湧也の逃げをきっちり差して1着と調子は決して悪くない。二次予選Aも取鳥雄吾の逃げに乗っての番手捲りで2着だ。決勝は勝負どころですんなり中団が取れてしまい、展開がよすぎたばかりに力を出し惜しみしたのが敗因で本人も反省しきりだった。今回は太田海也という心強い味方がいるし、6月の高松宮記念杯競輪では太田との連携で準決を3着で突破しているだけに、中四国の仲間とともに勝ち上がりが期待できる。
 太田海也は昨年の競輪祭は二次予選Bで3着に敗れたが、一昨年の競輪祭は準決を1着で突破してGⅠ初優出を決めており、小倉の高速バンクとの相性はもちろんいい。今年もビッグレース中心の出場だが、6月の高松宮記念杯、7月のサマーナイトフェステイバル、8月のオールスター、9月の共同通信社杯と連続で優出を果たしている。決勝は6着、7着、8着と大きな着が続いているのがやや気になるが、今回も世界レベルのスピードを発揮して着実に勝ち上がっていくだろうし、GⅠ初制覇も決して夢ではないだろう。
 古性優作は今年はまだGⅠの優勝はないが、2月の全日本選抜競輪が決勝7着、3月のウィナーズカップが優勝、5月の日本選手権競輪が決勝3着、6月の高松宮記念杯が決勝2着、8月のオールスターが決勝2着、10月の寬仁親王牌では決勝3着と安定した走りで獲得賞金ランキングは堂々のトップだ。ただ近況はやや調子落ちになっているのも事実で、寬仁親王牌では4日間勝ち星はなかった。それでも決勝で3着に突っ込んでいるのはさすがとしかいいようがなく、今回こそはGⅠ優勝をもぎとってグランプリ連覇へ向かっていくだろう。
 南修二は共同通信社杯で44歳にして初めてビッグレース優勝を飾った。近畿の結束力の賜物と言ってしまえばそれまでだが、一次予選では犬伏湧也に捲られながらも最後の直線で3番手から追い込んで差し交わした脚は鋭かった。寬仁親王牌は二次予選Aで敗れたが、一次予選は三谷竜生の捲りを追走して2着、3日目特選は内山慧大の逃げに乗っての番手捲りで1着と好調をキープしている。獲得賞金ランキングも7位につけており、グランプリ初出場に向かって今回も捲り兼備の鋭い差し脚を披露してくれるだろう。

清水裕友 山口 105期
古性優作 大阪 100期
南修二 大阪 88期

GⅠ初制覇の競輪祭で吉田拓矢が再び輝く

 吉田拓矢は8月の西武園記念の準決で落車して途中欠場、2場所空けた10月の京王閣記念でも二次予選で落車して途中欠場となったが、次場所の寬仁親王牌ではそんな災難続きを微塵も感じさせない強さを発揮していた。決勝は先行となり5着に終わったが、2日目ローズカップは展開がもつれたところを山口拳矢に捲られながら吉田も捲りで追いかけて2着、準決は眞杉匠との連携だったが河端朋之に捲られると最後の直線鋭く伸びて1着だ。競輪祭は2021年にGⅠ初制覇を達成しており、今年も小倉バンクで輝きを放つだろう。
 新山響平は獲得賞金ランキング11 位とグランプリ出場権のボーダーラインにいる。今年は3月のウィナーズカップで決勝3着、5月の日本選手権で決勝6着と健闘していたが、その後はビッグレースでの優出が途絶えてしまった。それでも10月の松阪記念決勝では北日本4車の連携から番手捲りで今年初優勝を達成しており調子は悪くない。寬仁親王牌は準決で敗れたが、二次予選Aと4日目特別優秀は逃げて2着と先行力も健在で、同期の吉田拓矢と同じくGⅠ初制覇を達成した競輪祭で勝ち上がりを目指す。
 深谷知広は獲得賞金ランキング9位とまさにボーダーラインぎりぎりのところにいる。今年は全日本選抜、ウィナーズカップ、高松宮記念杯、共同通信社杯で優出と年間を通して状態のよさをキープしてきた。南関東の仲間には頼れる先行選手だ。グランプリ出場権がかかっているだけに今回こそは自分が勝てる走りをぜひとも期待してみたい。
 山口拳矢は寬仁親王牌の準決で5着と敗れたが、残り3走はオール1着と絶好調で準決での敗戦がもったいなかったとしか言いようがない。初日特別選抜予選は村田祐樹の逃げに乗り犬伏湧也の捲りに合わせて番手捲りで1着、2日目ローズカップは前団がもつれたところを一気に捲って1着、4日目特別優秀は最終ホーム8番手から早めに巻き返し、寺崎浩平の逃げをあっさり捲り、後続を7車身ぶっちぎっての1着だ。中部は選手層が薄いが、単騎戦でこそ本領を発揮する山口が今回も強さを見せつけてくれるだろう。

吉田拓矢 茨城 107期
新山響平 青森 107期
深谷知広 静岡 96期
山口拳矢 岐阜 117期


プレイバック 2021年 第63回大会 優勝 吉田拓矢

単騎の吉田拓矢が7番手からの捲りでGⅠ初優勝


 北津留翼-園田匠の地元コンビが前受け、3番手に新山響平-渡邉一成の北日本コンビ、単騎の松浦悠士と郡司浩平が続き、7番手に古性優作-山田久徳の近畿コンビ、最後尾に単騎の吉田拓矢の並びで周回を重ねる。赤板2センターから郡司が上昇を開始すると近畿コンビと吉田が後を追っていく。郡司が3番手に並びかけると新山は車を下げ、郡司はさらに踏み上げて先頭に立つが、すかさず近畿コンビが郡司を切って先頭に立つ。そこで7番手まで下がっていた新山が反撃を開始したところで打鐘を迎えるが、松浦は北日本コンビを追わず郡司の後ろに入り、吉田が1車下げる。新山は古性の抵抗を難なく乗り越えて主導権を奪い、古性が3番手、4番手がインに郡司、アウトに山田。その後ろに松浦、吉田、北津留、園田の並びで最終ホームを通過する。古性、郡司、松浦は仕掛けきれず新山が逃げ切るかと思われたが、バック手前から大外を捲ってきた吉田が前団を飲み込んでGⅠ初優勝、新山が2着、吉田を追ってきていた園田が3着に入る。


バンクの特徴 無風の高速バンクで捲りが断然有利

 周長は400m、最大カントは34度01分48秒、見なし直線は56.9m。1998年にグリーンドーム前橋に次ぐ2番目のドーム競輪場としてリニューアルオープンした小倉バンクは、全国の競輪場のデータをもとに走りやすさを追求して設計された国内でも有数の高速バンクだ。
 昨年の競輪祭での一番時計は10秒8で3回出ているが、面白いのは3回とも追い込みがマークしたものだ。3日目6Rの一次予選では最終4角手前の8番手からインに切り込んだ浅井康太が最内のコースを鋭く伸びて1着。4日目2Rの選抜では阿竹智史が最終3角9番手からインに切り込み、最後の直線に入ると中コースを突き抜けて1着。6日目9Rの特選では松井宏佑の捲りを差し切った郡司浩平が南関東ワンツーで1着だ。小倉の高速バンクはもちろん捲りが断然有利で上がり10秒9の捲りが4回出ているが、たとえ勝負どころで後手を踏まされても、タイミングとコース取りさえ誤らなければ上位に食い込めるし、スジ違いの決着も多い。なお同時開催の競輪祭女子王座戦の一番時計は3日目12Rの決勝で太田りゆの逃げを捲った佐藤水菜の11秒8だった。
 昨年の決まり手を見てみると、全60レースのうち1着は逃げが6回、捲りが23回、差しが31回、2着は逃げが8回、捲りが11回、差しが19回、マークが22回となっている。やはり捲りが断然有利で先行は苦しい。大会最難関の5日目準決の3個レースも10Rは5番手から追い込んだ脇本雄太が1着、3番手から追い込んだ荒井崇博が2着で逃げた新山響平は4着。11Rは北井佑季の逃げを捲った犬伏湧也を差した松浦悠士が1着、犬伏が2着の中四国ワンツーで、逃げた北井は8着だが、北井の番手から松谷秀幸がなんとか3着に食い込んでいる。12Rは中野慎詞の逃げを捲った寺崎浩平が1着、2着入線の古性優作は落車を誘発した斜行で失格となり村上博幸が繰り上がりの2着で、逃げた中野は4着だったが菅田壱道が3着という結果だった。

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