松谷秀幸がサマーナイトフェスティバルで、初めてGⅡ以上のビッグレースで決勝3着、堂々の成績を収めた。目標にした郡司浩平が後方7番手に置かれる苦しい展開だったが、直線だけで3着に食い込んだ。勝負事にタラレバは禁句だが、もう少し前のポジションにいられたら「夜王」の称号が手に入ったかもしれない。悔しそうな表情の中、話を聞いた。
「郡司君に全て任せていたので。最終周回バックで郡司君が迷っているような感じだったので、悪かったけど、内に行かせてもらった。最近は、ずっと状態が良かったし、ビッグレースで初めて確定板に載れたのは素直に嬉しい」謙虚な松谷らしいコメントだ。
今シリーズは初日の予選から抜群だった。同門の佐々木眞也に前を任せ、その佐々木が逃げる中野慎詞・成田和也・大槻寛徳に猛然と襲いかかるが叩けず。すると松谷は3番手の大槻の所に降りて3番手を奪う。そして直線で早めに踏み込むと前の2人を抜き去った。「眞也があれだけ頑張ってくれたから」と後輩を称えたが、一瞬の判断、直線の伸びは秀逸だった。2日目の二次予選Aは郡司が突っ張り先行。抜けなかったが、これは郡司の走りが超抜だった。まくってきた取鳥雄吾を2回けん制し、3番手の小原太樹まで神奈川ワンツースリーを決めた。
最大の山場は準決勝。深谷知広・岩本俊介の3番手。だが深谷がいったんは抑えようとするも7番手。松谷は最終ホームおろかバックも9番手。誰もが着外を予想したが、3コーナーから進路を内に取り、最後は中に持ち出し2着に届いた。もっと早く切り替えることもできたが、ラインを重んじる松谷らしい選択だった。「もうギリギリでした。ただ落車もあったし優出できたけど、素直には喜べません」絶体絶命のピンチをしのいだ事に加え、3日間の走りから優勝も射程圏に捕らえた印象だった。
近況の良さを尋ねると「感」という言葉が返ってきた。「師匠から『感謝を忘れるな、感動するような競走をしなさい』と言われています。感という言葉をいっそう心に刻んで走っているからだと思います」この3着で賞金ランクは10位にジャンプアップした。
「全然意識なんてしていません」と無頓着だが、後半戦でも目が離せない。