伏兵・佐々木がファンの度肝を抜いた。青森記念で地元の新山響平、眞杉匠ら相手に一歩も引かないレース運びを見せて嬉しい嬉しい記念初優勝を成し遂げた。
改めて決勝メンバーを見ていこう。1番車から新山、売り出し中の森田優弥、眞杉、佐々木、守澤太志、高橋晋也、宿口陽一、長島大介、永澤剛。GⅠチャンピオンが3人、SS経験者が4人という記念でも豪華な顔ぶれだ。高橋の引き出しが望め、ライン4車の東北勢人気を集めたのも当然だと頷ける。高橋が思いきり飛び出し、2番手の新山が最終的にまくる2段駆け。関東は栃木勢と埼玉勢に分かれ、佐々木は単騎の競走になった。
案の定、高橋が逃げる展開。だが、眞杉が追い上げて新山と競る。地元の新山には意地があり、眞杉にもプライドがあり、両者の競りは激しく、そして長引いた。森田が3番手を狙い、守澤をどかす。宿口との連係は外れるという、目まぐるしい展開になった。佐々木はと言えば、前団のもつれを7番手でジッと見つめ、チャンスを伺っていた。最終バックで新山がインからまくりを打つと、ほぼ同時に佐々木もまくり上げ、後続を引き離す圧勝で、Vゴール。
「ワンチャンスはあるかなと思っていました。実際に走る前は色々と考えましたし、勝つためには番手で勝負しようかとも思いました」と振り返りさらに「自分でも信じられません。眞杉さんと新山さんがあれだけやり合って、展開が僕に向いただけです。まさか記念で優勝できるとは」と謙虚な言い回しながら、嬉しさは隠しようがなかった。ワンテンポ遅く仕掛けていたなら優勝はなかったかも知れない。瞬時の判断、それがドンピシャではまったのだ。大学卒業後はサラリーマンを経験しての苦労人でもある。デビュー5年目の記念制覇は、早いほうと言っていいだろう。
青森記念に参加する前、ひとりで富士山へ街道練習に出掛けた。「何度も行っているのですが、その時は曇っていて富士山が見えなかった(笑い)。モヤモヤした気持ちになりましたが、こうやって記念を勝つことができて気持ちが晴れました」と笑いを誘った。記念を勝ったことで責任感がいっそう重くなったわけだが、プレッシャーに押しつぶされずさらに上の舞台で活躍できることだろう。