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第40回 共同通信社杯競輪GII展望
レース展望 2024.08.28

第40回 共同通信社杯競輪GII展望

 第40回共同通信社杯競輪が宇都宮競輪場で開催される。8月のオールスターで今年初のGI優勝を決めた古性優作が今回も中心となるが、ホームバンクの平塚で残念ながら優勝に手が届かなかった松井宏佑、1番人気に推されながら9着に終わった眞杉匠、4車の大量優出を果たしながら優勝者を出せなかった北日本勢らの巻き返しにも注目したい。

古性優作率いる近畿の勢いは止まらない

 8月のオールスターではファン投票1位の古性優作が人気に応えて優勝を飾ったが、S級S班のGI制覇はこれが今年初であり、グランプリ出場権をかけた戦いは相変わらず混沌としている。オールスター終了時点での獲得賞金ランキングでは5位の清水裕友が9千万近くでほぼ当確と思われるが、7位の新山響平、8位の脇本雄太、10位の眞杉匠らはいつ逆転されてもおかしくない状況だ。共同通信社杯はGIIなのでグランプリには直結しないが、昨年の大会では深谷知広が優勝して賞金を上乗せし最終的には6位で6年ぶりのグランプリ出場を果たしており、今年も熾烈な賞金争いが繰り広げられるだろう。
 古性優作はオールスターの一次予選2では捲りで1着を取っているが、ドリームレースは3着、シャイニングスター賞は4着と本調子とは言えない様子だった。しかし、準決も1着は取れなかったが同期の窓場千加頼を徹底援護し、内からきた松浦悠士を締め込み、捲ってきた北井佑季を振るという抜群のハンドル捌きを見せてワンツーを決め、決勝はしっかり差し切って再び窓場とワンツー決着とこれ以上はない素晴らしいパフォーマンスも披露した。もちろん今回も近畿の先行選手たちとともにワンツー決着を狙っていく。
 窓場千加頼はオールスターのオリオン賞では太田海也に主導権を奪われて8着だったが、一次予選2は捲りの1着で上がりタイムは10秒8、二次予選と準決は堂々の逃げ切りでGI初優出を達成。決勝は古性優作に交わされたが5番手から捲って準優勝と大健闘だった。これで獲得賞金ランキングも42位からグランプリ出場が狙える9位へと上昇した。3月のウィナーズカップでも3連勝で勝ち上がり、決勝は近畿ラインの前を回って脇本雄太の優勝に貢献しており、今回もついに本格化した先行力を見せつけてくれるだろう。
 松井宏佑はオールスターでは百点満点の勝ち上がりを見せた。一次予選の1と2と二次予選は逃げて1、1、2着、そして準決は脇本雄太の逃げを捲って上がりタイムは10秒8だ。しかし、準決で強すぎる勝ち方をすると決勝で失敗するというのはよくあるパターンで、松井も勝ちを意識しすぎたのか、新山響平に叩かれた窓場千加頼が引いてきたときになんのリアクションも起こせなかったのが一番の失敗だろう。もちろん今回はオールスターでの失敗を糧により積極的な走りで今度こそのビッグレース初優勝を狙っていく。
 深谷知広はオールスターのシャイニングスター賞では新山響平の後ろから番手捲りを打った眞杉匠を大捲りで仕留めて1着とさすがの破壊力を見せつけたが、準決ではいつもの悪いクセが出て終始8番手のまま9着と惨敗している。これで獲得賞金ランキングは13位とS級S班からの陥落の危機に瀕しているが、昨年は共同通信社杯の優勝を機に急上昇してグランプリ出場を果たしており、今年も逆転一発を狙っていく。2022年3月に開催されたウィナーズカップでは決勝3着と健闘しており、宇都宮バンクとの相性もいい。

古性優作 大阪 100期
窓場千加頼 京都 100期
松井宏佑 神奈川 113期
深谷知広 静岡 96期

眞杉匠が攻めの走りで汚名返上を狙う

 7月のサマーナイトフェスティバルの決勝は北井佑季の後ろに入った脇本雄太が番手捲りを打つ展開となったが、眞杉匠が古性優作の牽制を乗り越えて捲り切り優勝している。それもあってか8月のオールスター決勝では単騎ながら眞杉が一番人気に推されていた。しかし、単騎ゆえに別線の仕掛けを待つしかなく、7番手となった松井宏佑と同様に9番手から動くことができずに9着に終わった。賞金ランキングも10位と厳しい状況が続いているだけに、今回こそは攻める気持ちを全面に押し出して汚名返上を狙ってくるだろう。
 地元戦での健闘を誓うのが坂井洋だ。坂井は3月のウィナーズカップで優出、5月の日本選手権では準決で惜しくも4着と敗れたが1着2回、2着1回と好調だった。しかし、6月の高松宮記念杯では予選2で失格、サマーナイトフェスティバルでは予選で落車と不運が続いてしまい、今回こそはホームバンクでの起死回生の走りを期待したい。オールスターも二次予選敗退と残念な結果だったが2勝を挙げており、一次予選1では捲りの2着だったが個人上がりタイムは10秒6をマークとタテのスピードは健在だ。
 北日本勢は2月の全日本選抜では優出者が新山響平のみ、高松宮記念杯も優出者は新山のみと寂しい状況が続いていたが、オールスターではようやく4人が優出して最も長いラインを組むことができた。準決では深谷知広や犬伏湧也を相手に新山が佐藤慎太郎と渡部幸訓を連れて逃げて上位を独占しており、窓場千加頼や太田海也などの強力先行型が次々と現れてきても緩急をつけた先行テクニックは新山が一枚も二枚も上だ。オールスター決勝では3着に終わったが、今回も徹底先行で優勝を狙ってくる。
 選手層の薄い中部は山口拳矢が近況低迷しているので、ベテランの浅井康太が相変わらずの孤軍奮闘を余儀なくされている。オールスターのオリオン賞は太田海也の番手で粘った山口拳矢と共倒れの形で5着だったが、一次予選2は脇本雄太との連係でいったんは山崎賢人に割り込まれて3番手となったが、ゴール前では意地で伸びて脇本とワンツーを決めている。二次予選も寺崎浩平の捲りに乗って1着と番組次第では近畿勢と連係できるのが大きなアドバンテージで、準決で惜しくも4着に敗れているが今回も軽視はできない。

眞杉匠 栃木 113期
坂井洋 栃木 115期
新山響平 青森 107期
浅井康太 三重 90期

清水裕友が今年初のビッグレース優勝を目指す

 清水裕友は8月のオールスターの一次予選2では1着入線ながら斜行で失格となった。しかし、直前の松戸記念ではスピード抜群の捲りで今年3度目の記念優勝を飾っており、1月の大宮記念の優勝から始まって今年はずっと安定した成績を維持している。おかげで獲得賞金ランキングは5位で今年もグランプリ出場は濃厚だが、ビッグレースの優勝がないのはファンにとっては物足りない。シーズンオフのない競輪選手にとって安定を維持するのは大変なことだが、もう一歩突き抜けた走りでの優勝をぜひとも期待したい。
 太田海也はパリ五輪から中0日の強行軍でオールスターに参戦、オリオン賞は後ろが競りで仕掛けづらい展開となり7着だったが、一次予選2は逃げ切りで松浦悠士とワンツー、二次予選も逃げ切りで岩津祐介とワンツーと強い走りを見せた。ただ準決では疲れがピークに達していたせいなのか脇本雄太との先行争いを避け、3番手に引いたところを眞杉匠に押し込められて9着に終わったのは残念だった。それでも6日目優秀はやはり逃げ切りで桑原大志とワンツーを決めており、今回も徹底先行で勝ち上がってくれるだろう。
 犬伏湧也はオールスターのオリオン賞では太田海也と連係するも山口拳矢に競りかけられて9着に終わった。それでも一次予選2は捲りで岩津祐介とワンツーを決め上がりタイムは10秒8、二次予選も捲りの2着で準決に進出している。準決は新山響平の先行ペースにはまって8着に敗れたが、6日目優秀は捲りの1着で上がりは10秒9と好調だ、7月の小松島記念では清水裕友、深谷知広、新田祐大らを相手に捲りでうれしい地元優勝を飾っており、今回もパワー満点の捲りで一発を狙っていく。
 オールスターの九州勢は12人が二次予選に進んだが、そこから準決に進めたのは3連勝で勝ち上がったベテランの荒井崇博のみで、その荒井も優出に失敗とまたもや寂しい結果に終わった。6月の久留米記念決勝では新山響平や松浦悠士を相手に伊藤颯馬が九州勢を引っ張って山崎賢人が優勝、7月の別府記念決勝も古性優作や松浦悠士を相手に伊藤颯馬が引っ張って阿部将大が地元戦で完全優勝と個々の選手の力は決して他地区には引けを取らないはずで、今回こそはラインの力を結集しての勝ち上がりを期待したい。

清水裕友 山口 105期
太田海也 岡山 121期
犬伏湧也 徳島 119期
荒井崇博 長崎 82期


プレイバック 2018年 第34回大会 高知競輪
平原康多が直線強襲で共同通信社杯初優勝


 山崎賢人-山田英明の九州コンビが前受け、3番手に平原康多-和田圭の混成コンビ、単騎の村上義弘と浅井康太が続き、6番手に太田竜馬-清水裕友の中四国コンビ、最後尾に郡司浩平で周回を重ねる。赤板から村上が上昇して先頭に立つが、追ってきた郡司が村上を交わして誘導員の後ろに入る。山崎は引き、3番手となった太田は前との車間を大きく空けてタイミングを計る。太田は打鐘過ぎの3角から発進、合わせて郡司もペースを上げるが、太田は郡司を叩かず、最終ホームで郡司の後ろに入ろうとする。そのとき太田は村上と接触して村上が落車、太田も車体故障を起こして後退する。そのため郡司が逃がされる格好となり、清水、平原が続く。そこへ山崎が捲りで襲いかかり、山崎はバックで先頭に立つ。山崎のダッシュに離れ気味だった山田も追いつき、叩かれた郡司はインで粘るが、4角で清水に捌かれる。さらに清水は山田を弾いて山崎を抜きにいくが、ゴール前で清水の外を追い込んできた平原が先頭でゴール、2着に清水、3着に浅井が入る。



宇都宮競輪場バンクの特徴
直線の長い500バンクだが先行選手も健闘できる



 周長は500m、最大カントは25度47分44秒、
見なし直線距離は63.3m。直線部がやや長くカーブのきつい扁平なバンクで追い込み選手が有利だが、2009年のメインスタンドの改修工事に伴い見なし直線距離が若干短くなり、1センター側に大型ヴィジョンが設置されて先行選手はそれを見ながら仕掛けのタイミングを計れるようになったので先行も決して不利とはいえない。
 2022年3月に開催されたウィナーズカップでは初日は冷たい雨の降るあいにくの天候で12レースのうち捲りの1着が10回、差しの1着が2回だったが、2日目は逃げ切りが3回、逃げ粘りの2着が1回で、先手ラインの選手が1着を取った回数も6回と先行選手が大活躍だった。
 なおメインスタンドの一部が吹き抜けになっており、1センター側に大きな建物がないことから1コーナーから2コーナーとホームスタンド側にかけて風が通り抜けることがあるが、2日目は風速2mから4mの南よりの強い西風が吹いていて、1コーナーから2コーナーにかけて追い風になっていたのが先行選手に有利に働いていたようだ。
 ちなみに2023年の大会の1着、2着の決まり手を見てみると、全47レース(ガールズコレクション1個レースを除く)のうち1着は逃げが4回、捲りが18回、差しが25回、2着は逃げが5回、捲りが12回、差しが21回、マークが9回となっている。
 やはり4日間を通して見ると捲りが断然有利だ。カントが緩くてスピードに乗りにくいのでレースは仕掛けが遅めのスローペースになりやすく、勝負どころで後方に置かれた選手でも力があれば捲っていけるし、捲りと捲りの力勝負の決着も多い。もうひとつ注目したいのが2着のマークが少ないことだ。直線が長いので最終4コーナーを過ぎると中団で脚を溜めていた選手が次々とタテ脚を発揮してくるので並び通りの決着になりにくい。
 なお大会のベストタイムは3日目の準決で脇本雄太が7番手から捲ってマークした13秒3だ。


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