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第67回オールスター競輪展望
レース展望 2024.07.31

第67回オールスター競輪展望

#グレードレース展望

 第67回オールスター競輪が平塚競輪場で開催される。ファン投票で1位と2位に選ばれた古性優作と脇本雄太の近畿コンビがやはり中心だが、7月のサマーナイトフェスティバルで結果を残せなかった地元・南関東勢の巻き返しも見どころだ。サマーナイトを優勝した眞杉匠率いる関東勢も強力で、新山響平率いる北日本勢や清水裕友と松浦悠士の中国コンビの復活の走りにも期待したい。

ファン投票で選ばれた選手たちの真剣バトル

 オールスター競輪はファン投票によって出場選手が決まるのが特徴で、ファン投票の1位から9位までのベストナインが初日のドリームレースに、10位から18位までの9名が2日目のオリオン賞レースに出走する。しかし、両レースとも位置づけは特別選抜の一次予選で、出走選手たちはポイントの優遇処置はあるものの予選スタートの選手たちと同様に2走してポイントを稼がねばならず、2走の合計ポイントの上位者9名は準決へフリーパスの4日目のシャイニングスター賞へ勝ち上がれるため、ファン投票で上位に選ばれた選手たちも1走目から真剣勝負の熱いバトルを繰り広げることになる。
 ファン投票1位は輪界最強のオールラウンダーである古性優作だ。昨年の2位からワンランクアップして初の1位に輝いた。サマーナイトの決勝は4着だったが、脇本雄太が北井佑季を突っ張ると古性は郡司浩平を捌いて脇本を北井の番手に迎え入れ、再度追い上げてきた郡司を捌くという大仕事をやってのけた。眞杉匠が捲ってきたときに古性も合わせて出れば優勝があったかもという見方もあるが、古性はかたくなに競輪道を貫いており、今回も近畿の選手たちは後ろが古性ならばと積極的に仕掛けてくれるだろう。
 清水裕友は今年前半は優勝には手が届かなかったもののビッグレースで大活躍し、ファン投票でも昨年の14位から5位へと大幅に順位を上げた。ただ残念ながら近況は前半戦の勢いが止まっている印象でサマーナイトでは優出を逃している。盟友の松浦悠士も昨年と同様に今年もファン投票で3位にランクインしているが、近況は不振が続いている。それでも清水は7月の小松島記念で得意の捲りで2勝しており調子自体は決して悪くはなさそうで、清水と松浦のゴールデンコンビの復活の走りが期待できるだろう。
 眞杉匠は昨年のオールスターで関東4車の結束からGI初優勝を飾り、競輪祭では単騎戦からの捲り追い込みで2度目のGI優勝を達成している。おかげでファン投票も昨年の13位から今年は6位へとアップしている。今年の関東勢は5月の日本選手権で5車結束から平原康多が復活優勝と勢いを取り戻してきており、サマーナイト決勝では近畿勢と南関東勢の叩き合いでもつれたところを眞杉が捲って吉田拓矢とワンツーを決めており、今回も関東連係が上手く噛み合えば有利にレースを運ぶことができるだろう。
 新山響平はファン投票では昨年と同様に8位にランクインしている。2022年の競輪祭以降はGIでの優勝はないが、タイトルホルダーとなっても徹底先行のスタイルを崩さない走りがファンから高く評価されているのだろう。サマーナイトでは残念ながら準決で敗れたが、初日予選は小岩大介の直線強襲に屈しながらも新山は突っ張り先行で2着に粘り、3日目特選も赤板から先行態勢に入って2着に粘り渡部幸訓とワンツーを決めており、今回もファン投票7位の佐藤慎太郎とのワンツーを狙っていく。
 北井佑季はデビュー以来南関東勢を全力で引っ張ってきたが、そのお返しとばかりに高松宮記念杯ではラインの力に助けられて念願のGI初優勝を飾った。ファン投票でも昨年の23位からジャンプアップして今年は9位とベストナイン入りを果たしている。サマーナイトでもしっかり優出を果たしているが、脇本雄太の気迫あふれる走りで南関東ラインは分断されてしまった。それでも今回はホームバンクでの開催なので、地元のファンの大きな期待に応えるためにも持ち味の主導権取りに燃えてくるだろう。

古性優作 大阪 100期
清水裕友 山口 105期
眞杉 匠 栃木 113期
新山響平 青森 107期
北井佑季 神奈川 119期


郡司浩平が地元戦でサマーナイトの雪辱を期す


 郡司浩平は今年はS級S班から陥落したが、全日本選抜では北井佑季の逃げに乗って優勝し返り咲きを確定させた。そのお返しに高松宮記念杯では北井を引っ張ってGI初優勝に貢献しているが、ファン投票では昨年の4位からダウンして今年は10位となった。やはり南関東ラインの番手の位置が狙われやすく、ヨコのもろさを露呈しているのがダウンの原因のひとつだろう。しかし、今回は地元開催の大会だけに同じ失態を何度も繰り返すわけにはいかず気合いを入れ直して南関東ラインの番手を死守してくるだろう。
 山口拳矢はファン投票では昨年と同様の11位だ。昨年日本選手権を優勝したあとはビッグレースでこれといった活躍が見られなかったのが一番の原因だろう。しかし、今年は4月の日本選手権で優出、6月の高松宮記念杯は二次予選で敗れたが、サマーナイトフェスティバルで優出と調子は戻ってきている。決勝では333バンクなので外からの捲りでは届かずと読んで内に突っ込んだのが結果的には失敗だったが、今回はGI初優勝を飾った相性の抜群の平塚バンクなので、昨年同様の切れ味を発揮してくれるだろう。
 今大会の目玉のひとつはパリ五輪に出場するナショナルチームの選手の参戦だろう。太田海也は国内の競輪の出走は多くないが、その強さが評価されてファン投票では15位にランクインしている。昨年の競輪祭では一次予選1が逃げて2着、一次予選2は事故入で6着だったが二次予選Bは逃げ切り、準決も逃げ切ってGI初優出を達成している。決勝は4着だったが、いきなりのGI優勝も夢じゃないと思わせる勢いだった。年末のヤンググランプリも優勝しており、今回も圧倒的なスピードを見せつけてくれるだろう。
 犬伏湧也は昨年10月の寬仁親王牌以降はビッグレースでの優出がなくなり、ファン投票も昨年の12位から16位と今年は少しだけランクダウンした。それでも近況は持ち味の先行力で好走を続けており調子はいい。6月の高松宮記念杯では一次予選1、一次予選2、二次予選と逃げ続けて準決まで勝ち上がっており、準決は脇本雄太に逃げられたが3着と惜敗している。サマーナイトも準決は逃げて8着だったが、初日予選はしっかりと逃げ切っており、今回も太田海也とともに中四国勢を引っ張っていく。

郡司浩平 神奈川 99期
山口拳矢 岐阜 117期
太田海也 岡山 121期
犬伏湧也 徳島 119期

吉田拓矢が関東結束から2度目のGI制覇を狙う 


 吉田拓矢は昨年のオールスター決勝では暴走による失格と苦い思い出があるが、斡旋停止から復帰後は好成績を積み重ねている。関東5車が結束した4月の日本選手権決勝では平原康多の復活優勝に貢献、6月の取手記念決勝ではやはり関東5車が結束、3番手を固めていた吉田がゴール前で抜け出して地元記念初優勝を達成している。次場所のサマーナイトフェスティバルでも優出し、決勝では眞杉匠の捲りに食らいついて2着と関東ワンツーを決めている。今回も関東結束から2021年の競輪祭以来のGI優勝を目指す。
 松井宏佑は高松宮記念杯の準決では北井佑季を連れて逃げて北井を決勝へと導いている。同じく優出した和田真久留とも予選2で連係して勝ち上がりに貢献している。サマーナイトでは準決で敗れたが、同じく優出を逃した岩本俊介とは初日予選と3日目特選で連係して岩本に勝ち星をプレゼントと南関東の選手にとっては頼もしい存在となっている。もちろん松井はただ逃げるだけではなく、昨年の競輪祭では準優勝とGIを取れる力を十分に持っている。近況の南関東は勢いがあるだけに今回は松井のGI初制覇もありうるだろう。
 山崎賢人はナショナルチームに属してパリ五輪出場を目指していたが、夢叶わず6月の久留米記念から競輪に復帰した。ナショナルチームで鍛錬を積み重ねた自慢のスピードを武器に優出を果たし、決勝では伊藤颯馬-嘉永泰斗の3番手を固め、最後は直線鋭く抜け出して優勝している。次場所のサマーナイトは準決で敗れているが、初日特選予選は北井佑季の逃げを最後尾から捲って1着、3日目特別優秀は逃げて荒井崇博とワンツーとさすがの走りを見せており、近況元気のない九州勢の救世主となってくれるだろう。

吉田拓矢 茨城 107期
松井宏佑 神奈川 113期
山崎賢人 長崎 111期


  



プレイバック 2019年 第62回大会 新田祐大
北日本結束で新田祐大が2度目のオールスター制覇


 菅田壱道-新田祐大-渡邉一成-佐藤慎太郎の北日本ライン4車が前受け、5番手に平原康多-諸橋愛の関東コンビで九州の中川誠一郎が追走、8番手に郡司浩平-中村浩士の南関東コンビの並びで周回を重ねる。青板の2コーナーから郡司が上昇を開始するが、同時に菅田が中バンクに上がって郡司を牽制し、とっくに腹を決めていた菅田は赤板から突っ張り先行に出る。打鐘を迎えたときにはすでにハイピッチで、北日本ラインから2車身ほど離れた5番手に平原、後退した郡司も関東ラインから2車身ほどの離れた8番手の縦長の展開で最終ホームを通過する。しかし、平原が最終2コーナーから渾身の捲りを打つとあっというまに前団に追いつき、合わせて番手から抜け出した新田の半車輪ほど前に出る。それでもサラ脚で回ってきた新田はさすがのダッシュ力を発揮して4コーナーで平原を抜き返し、そのまま先頭でゴールイン、北日本の3番手から伸びた佐藤が2着、平原を追った諸橋が3着に入る



バンクの特徴 クセがなくて走りやすいが風の影響が強い

 
 周長は400m、見なし直線距離は54.2m、最大カントは31度28分37秒。カントも直線の長さも標準的で、走路もクセがなくて走りやすいので戦法的な有利不利がなく力どおりの決着になることが多い。
 ただバック側が相模川のうえに海も近く、バンク内には池もあるので、天候による湿度の変化や相模川を通って吹き寄せる海風の影響でバンクが重くなることがあり、トップレーサーが集うGIの大会でも先行選手がうまく風を味方にして駆ければ逃げ切れるケースが多い。
 昨年5月に開催された日本選手権では最終日以外は天候に恵まれていたが、連日バック追い風の強い風が吹いていた。そのためか初日は逃げ切りが1回、逃げ粘りの2着が4回で、全11レースのうち9レースで先手ラインの選手が1着を取っている。そして5日は風速3.5mの強風だったが、逃げ切りが4回、逃げ粘りの2着が3回で、最難関である準決の3個レースも2個レースで先手ラインの選手が1着を取っている。
 ちなみに昨年の大会の決まり手を見てみると、全66レース(ガールズコレクション1個レースを除く)のうち1着は逃げが11回、捲りが28回、差しが27回、2着は逃げが11回、捲りが10回、差しが14回、マークが31回となっている。
 ここで注目したいのは1着の差しが捲りより少ないことだ。2着の差しもマークの半分以下となっている。平塚バンクはクセがなくて走りやすいが、直線ではとくに伸びるコースはないので、展開有利になったとしても力がなければやはり伸びきれない。捲りもイエローライン上を伸びての大外強襲というケースは少なく、中団確保が必須だ。
 なお昨年の大会のベストタイムは10秒7で脇本雄太が準決で逃げ切ってマークしており、そのほかにも10秒8が4回出ている。

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