日本選手権競輪は文字通り、日本一の競輪選手を決める大会です。昨年は山口拳矢が4番手から、捲り追い込みで優勝しました。今年はいわき平競輪場での開催。ここ最近は当地でGI開催が多く、選手も熟知したバンクと言えます。それ故に組立ての失敗は読みの浅さで、その選手の競輪への考えが知れます。
そしていわき平は風の影響を受けやすいバンク。空中バンクと命名されているだけに少し高い位置にあり、しかもコーナーには観客席と言う風避けがないのです。
今シリーズも風の影響はかなりありました。5日目を終え、先行逃げ切りは深谷のみ。そのレースは先行一車で番手がもつれる展開でした。ルール的に自力選手が優位になり、細切れ戦が増えた事もありますが、今シリーズは先行選手にとって苦しいシリーズになりました。
決勝メンバーも本格先行不在。準決勝でも番手選手が早く追い込み、決勝に乗る事を優先していました。置かれている状況はそれぞれ違いますが、先行選手にとっては報われないレースでした。
その準決勝を振り返ります。
9Rは眞杉が先行し番手平原が早めに抜きに行きました。平原にとってはここ最近の不振が、そうさせたのかも知れません。ただその事によって山口は浮上しました。平原が普通に踏み出していたら、山口は流れに乗れなかったかも知れません。展開のあやです。
10Rは深谷の先行一車で番手岩本が競られる可能性の高いレースでした。それを気にしたのか深谷が早めに先行体制を築き、別線に早めなので下げさせる意図があったかも知れません。しかし岩本はかなり早めに追い込みました。
11Rは清水が想定外のスタート位置だったかも知れませんが、シリーズの流れを一気に引き込む様な捲りで完勝でした。そして決勝メンバーが出揃いました。関東5車。並ばず別れ、後は単騎を選択。本格先行不在。ラインは吉田、平原、武藤のライン形成。そして小林、諸 橋のラインです。読みづらい構成の決勝戦となりました。
展開予想
スタートは小林が出ると予想。何故なら小林は捲りでここまで勝ち上がって来ました。仮に先行しても、小林自身も番手の諸橋もチャンスは無い。ただラインのある吉田が駆け渋った時のみ、ホームカマシはあるかも知れません。そして古性、清水が続き、吉田ライン。そこに山口、岩本 が続き周回。吉田が上昇し、そこに山口も続くが古性と清水が割って入る。小林は下げる。スローなペースで打鐘を迎える。しかし吉田が遅めに抑える事があれば、流れで岩本のホームカマシはあり得る。その場合吉田ラインは優位になるが、これはあくまで遅めならで、基本は吉田が先行。そして中団キープの単騎の選手が捲る。それは古性か清水になる。どちらが仕掛けてもその番手になった選手が優勝に1番近いと感じる。自在選手なら中団確保が基本であり、一番上手い選手になる。それはプライドの問題である。勝つ事を優先するか、プライドを優先するかです。この両者に山口が続き、後は後方になった小林が届くかである。
車券的推理予想 3=1ー258 3ー5ー128 3=8ー356
結果 2-9-1 534.4倍(171番人気)
レース経過
スタートは吉田ラインが取り、古性、清水、山口と単騎勢が続き、小林ラインで、岩本で周回を重ねる。まず後方の小林が動き、それに合わせて古性が上昇。そこに単騎清水、山口が続く。岩本は終始最後方。小林の上昇で前受けを選択した吉田も踏み込む。古性に出られたが、それでも尚古性の後ろを狙う様な動きでした。清水に下げさせられた後は6番手まで下げる。本来は小林ラインの3番手の作戦だったのか、位置にこだわった。ただ下げてからの切り替えは早かった。本格先行でない小林なので、ペースはスロー。そこから吉田が一気に主導権を奪った。ライン3車しっかり出切った。そこで混乱したのが単騎勢。吉田の仕掛けに反応も遅れ、平原が少し離れ気味だったので狙い所だったが、ここも反応出来ず。古性は3番手を取った事で、自身の仕掛け所に気持ちが向かってたのかも知れない。そこでの吉田の仕掛けで、リズムが狂い対応出来なかったと思う。その時、終始後方にいた岩本が関東勢を追う。混乱のホームからバックだった。後方になった山口も仕掛けるが、遠い位置。3コーナーに入り平原の優勝が濃厚になっていった。そして平原がしっかり交わし、後続を振り切り優勝。平原康多が念願のダービーを制し、日本一の競輪選手に輝きました。
今シリーズは風の影響もありバンクが重いと言うコメントが多かったです。そして先行逃げ切りも二次予選の深谷と、最終日の北井の2回だけでありました。優勝を目指し参加した上位陣も混沌としたレース展開で、結果として最後まで動かない選手が優位になり、上位陣は脱落して行きました。決勝も本格先行不在の想定外の構成でした。しかしこの事は平原にとっては味方したのかも知れません。平原はダービーを幾度も狙って参加したと思います。しかし勝てなかった。そして年齢と共に脚に陰りが見えて来ました。諦めかけていたダービーです。若手の機動型の踏み出しやペースに脚が貯まらない状況が増えたと思います。本格先行が不在になった事で仕掛けが遅れた事は平原にとっては好材料でしたね。しっかりと巡って来たチャンスをものにしました。ここから平原の反撃とはいかないでしょうが、再び存在感のあるレースを期待したいです。