思い描いていた自分を超えていく
55歳の濱田が3月松阪で優勝した。
レースは任せた安本昇平が前受け。打鐘からカマして来た邊見祐太の番手に最終ホームではまった。「安本君がいい位置を取ってくれた。これなら安本君の優勝だな」と思っていたが、山元大夢をけん制しながら3コーナーまくりに出た安本の出がひと息。これを見逃さなかった濱田が4コーナーから安本の内に切り込むと、直線鋭く突き抜けた。
「ゴール後は、あれ?って感じで、放心状態だった。優勝は20年ぶりですね。みんな喜んでくれたみたいで、3歳の孫も『じいじ、やった』って喜んでたみたいです」
2004年8月武雄以来、19年半ぶりの優勝を、まだ信じられないといった表情で振り返った。
この年齢で優勝すること自体、すごいことだが、直近で4割を超える3連対率を残していることも立派だ。濱田自身も「自分が思い描いていた55歳とは少し違う」と言う。
「デビューした頃、近所のおばちゃんに『競輪選手って何歳ぐらいまでできるの?』って聞かれて、『55歳くらいまでやるのが目標』って話していたんです。いざ、自分がその年齢になってみると、まだいけるんじゃないかって気持ちになっている」
同県の重一徳(60歳)や竹野行登(5月で57歳)、同支部の川添輝彦(沖縄、59歳)と、周りには現役で活躍する先輩が多い。
「先輩の存在はいい刺激になってます。川添さんは来期からA級2班に戻るってすごいことだし、僕も年齢のことを言ってられない。僕も60歳まで頑張って、ちゃんと競輪競走をしていたい。先輩のおかげで、まだやれるんじゃって気持ちになるし、僕なんてまだ若造ですから(笑い)」
4月武雄でも決勝に勝ち上がった。通算200勝も、武雄終了時点であと4勝に迫っている。先輩の存在に触発されて、これからも濱田は思い描いていた自分自身を超えていく。