記念のV
全員が脇本雄太や古性優作になれる訳ではないし、選手それぞれ、目指すところは違う。デビューしたての新人はS級選手に憧れ、自分の実力が分かった時点で軌道修正する。これは選手の性格にもよるが、ベテランの域に入れば、少しでも長い現役生活を求め、A級2班の選手なら、公傷制度のないチャレンジには落ちたくないと考える。賞金もアップして、やり甲斐もあり、時間の自由もある競輪選手は、怪我のリスクさえなければ、こんなに美味しい商売はない。
S級1班に在籍する取鳥雄吾だが、当面の目標は記念のV。まだタイトルとか考える立場ではないし、そこは本人が一番わきまえている。取鳥雄吾は「今の戦法(先行・捲り)では100%、タイトルは無理。これから、自在に脚質を変えて、松浦悠士さんみたいになれれば、ワンチャンあるかも…。それまでは、自力に拘っていきたい。今は防府にアパートを借りて、清水裕友と練習をやりたいから出稽古中。日々、良いトレーニングができている。地元記念で優勝するのが目標だったけど、来年のお楽しみですね(苦笑)。この悔しさがあれば、練習も身に入ります」。
この地元玉野記念は特選シードで初日は、同県の隅田洋介を連れて清水裕友・松浦悠士と別線。結果は見せ場を作ったが9着大敗。二次予選は後輩の晝田宗一郎に乗り人気に応える1着。準決は山口拳矢の捲りに屈したが、3着に粘り決勝進出。だが、中川誠一郎が言うように、持っていない惜しい男なのか、大親友の清水裕友が勝ち上がりに失敗。清水裕友が決勝で同乗なら2段駆けで地元Vの可能性も高かった。「まさか、裕友がと言う感じでした…。さすがに、松浦さんに前をお願いするのは筋が違うと思うので。そこは、わきまえているつもりです」。
決勝は眞杉匠に先行勝負に勝ち、松浦悠士と岩津裕介のワンツーに貢献。先日の名古屋F1では、後輩で徹底先行の町田太我の前を買って出ている。これも、将来の布石になる。普段のレースをきちんとやっていれば、松浦悠士・清水裕友・町田太我・犬伏湧也の力を借りて、大きなところを獲るのも夢ではないだろう。