今年も決まり手100%逃げ
『明けましておめでとうございます。本年も先行を貫き頑張るので、よろしくお願いします』―24年元旦、大垣FⅠのA級準決勝の走りは年賀状代わりの激走となった。
赤板過ぎからすかさず先頭に立つと、同型のライバル金田涼馬を出ささず打鐘から主導権を握った。G前で差されはしたが番手の上田隼とのワンツー決着を決めた。出切ってからペースを巧みに落とし、最終4角からの踏み直しと完璧なチェンジオブペースができた会心駆けだった。予選は後ろの競りもあり逃げ快勝。決勝は近畿の格上・中村一将が付いての先行でペース駆けは叶わず、中村の優勝に貢献する7着だった。
「大垣は自分のスタイルは貫けたと思います。最後は一将さんとワンツーだったら最高だったんですけどね」と苦笑いも存在感を示した。
高校から始めた自転車競技に可能性を見出した。2年の時にインターハイの4km速度競走で3位に入り、本格的にプロのレーサーになろうと、高校の練習場でもあった福井競輪で、若手を鍛えている名レーサー市田佳寿浩の道場の門をたたいた。市田のきめ細かい指導で養成所には2度目で合格した。養成所では瀧澤正光所長の指導もあり、先行へのこだわりから大敗が続き、成績は最下位に終わった。「勝ちにいっても歯が立たなかったのも確かだけど、瀧澤先生や師匠にも出てからが勝負だからと言われていたので成績は気にしなかった」と振り返る。
決まり手100%逃げ、20年5月のデビューから徹底先行にこだわった。そのこだわりは21年2月の特別昇班で決めたA級1・2班の戦いで自身を苦しめた。先手を取れない時の大敗が響き、安定した成績を残せなかった。それでも「養成所時代は、負けパターンを学んだ。今は勝ちパターンを学んでいるんです」と前を向く。
師匠の市田からは戦法への具体的なアドバイスはない。ただ「頑張ってこい」と言われる。師匠も先行へのこだわりが強者への道と見極めている。
今最大の刺激が市田の息子龍生都さんだ。中央大学の自転車競技部で活躍しプロデビューを見据える。「練習では化け物ですよ。彼がデビューした時には上で待ちたいんです。今の自分のスタイルのままで」。
師匠のDNAを受け継ぐ〝龍〟に背中を押されて、徹底先行を貫き、S級〝昇龍〟を目指す。