今年のベストナインによるファイナルバトル・KEIRINグランプリ2023が12月30日に立川競輪場に於いて号砲を迎える。年間GI3勝の快挙を達成した古性優作と脇本雄太の近畿コンビが中心だが、先行力抜群の新山響平と佐藤慎太郎の北日本コンビや2年ぶりにグランプリでタッグを組む松浦悠士と清水裕友の中国コンビも強力で、もちろん山口拳矢、眞杉匠、深谷知広の単騎勢の一発も侮れない
輪界最強の男が2年ぶりグランプリ制覇を目指す
古性優作 大阪 100期
古性優作は2月の全日本選抜では脇本雄太の逃げに乗って連覇を達成、いち早く3年連続3度目のグランプリの切符を手にいれた。6月の高松宮記念杯も脇本の逃げに乗って連覇を達成、地元岸和田のファンから万雷の拍手を受けた。10月の寬仁親王牌は脇本不在の大会だったが決勝では4番手から捲って完全優勝、1997年の神山雄一郎以来の26年ぶりとなる年間GI3勝の偉業を達成と輪界最強の名を欲しいままにした。11月の競輪祭では準決で敗れたが、落車骨折から復帰した脇本の存在も心強く、2年ぶり2回目のグランプリ制覇を目指す。
ダービー王の称号に恥じない走りで復活を狙う
山口拳矢 岐阜 117期
山口拳矢は2021年9月の共同通信社杯でGⅡ初優勝を飾っているが、その後は伸び悩みビッグレースでの決勝進出もなくなった。しかし、今年2月の伊東温泉の決勝では3番手からの追い込みでGⅢ初優勝を達成している。そして迎えた5月の日本選手権では準決を2着で突破してGI初優出を達成すると、決勝は犬伏湧也の逃げを目標に番手捲りを打った清水裕友をやはり3番手から追い込んでGI初優勝を飾った。その後は8月のオールスターでの落車の影響で低迷したが、初出場のグランプリではダービー王の称号に恥じない走りで復活を狙う。
競輪祭に続いて単騎戦での一発を狙う
眞杉 匠 栃木 113期
眞杉匠は2021年と2022年の日本選手権でGI優出を果たしていたが、3度目のGI決勝となった今年8月のオールスターでは吉田拓矢の逃げを目標に番手捲りでGI初優勝を飾った。10月の弥彦の寛仁親王牌では準決で地元の諸橋愛を連れて逃げて諸橋の優出に貢献したが、自身は9着に終わった。しかし、11月の競輪祭は準決を3着で突破すると、決勝は単騎だったが逃げる南関東ラインの後ろの4番手の位置を確保すると、番手捲りの松井宏佑をゴール前で交わして2度目のGI優勝を達成しており、初出場のグランプリでも単騎戦での一発を狙う。
好相性の立川バンクで驚異の差し脚を発揮する
佐藤慎太郎 福島 78期
佐藤慎太郎は2019年のグランプリでは立川の長い直線を利し、3番手から脇本雄太と新田祐大の中を割って初優勝を飾っている。今年11月に47歳を迎えた佐藤は今回のグランプリメンバーの中ではもちろん最年長だが、5月の日本選手権で決勝3着、6月の高松宮記念杯で準優勝、10月の寬仁親王牌も準優勝と微塵も衰えを見せない鋭さで大活躍、獲得賞金ランキング4位で5年連続9度目のグランプリ出場を決めた。今回は相性抜群の新山響平のとの連係となり、好相性の立川バンクで再び驚異の差し脚を発揮する。
2年ぶり清水裕友とのタッグで好連係を見せつける
松浦悠士 広島 98期
松浦悠士は6月の高松宮記念杯で決勝4着、11月の競輪祭で決勝3着になっているが、8月のオールスターでの落車の影響もありGIで優出は2回のみとやや物足りない結果に終わった。しかし、3月のウィナーズカップ決勝では脇本雄太-古性優作の3番手からの中割りで脇本を交わして3年ぶり2度目の優勝を達成、7月のサマーナイトフェスティバル決勝では初連係となった脇本雄太の逃げを差して3連覇の偉業を達成している。今回は清水裕友と2年ぶりにグランプリでのタッグとなり、5年連続5度目の大舞台で好連係を見せつける。
単騎戦でも鋭さを発揮して優勝を狙う
深谷知広 静岡 96期
深谷知広は9月の共同通信社杯では準決を捲りの1着で突破、決勝は渡邉雄太の番手で、渡邉が先行態勢に入ったところを新山響平に叩かれて渡邉が2番手、深谷が3番手となったが最後の直線で鋭く伸びて9年ぶりのビッグレース制覇を達成した。その勢いに乗って11月の競輪祭でも優出を果たし獲得賞金ランキング6位で6年ぶり6度目のグランプリ出場を決めた。今回は単騎戦となりそうだが、競輪祭の準決では脇本雄太の逃げを3番手から追い込んで1着となっており、共同通信社や競輪祭のときのような鋭さを発揮できれば優勝が狙えるだろう。
2年ぶりの返り咲きで強さを発揮する
清水裕友 山口 105期
清水裕友は昨年は選考順位10位の補欠でグランプリ出場はならず、4年間守り続けたS級S班の座から陥落した。しかし、今年は5月の日本選手権で準優勝、8月のオールスターで決勝4着、9月の共同通信社杯で9着と奮闘して賞金を積み重ね、獲得賞金ランキング7位で2年ぶり5度目のグランプリ出場を決めた。11月の競輪祭では二次予選Bで4着に敗れたが、直前に地元の防府競輪場が改修工事のため玉野競輪場で開催された防府記念では前人未到の6連覇を達成しており、今回も盟友の松浦悠士との連係で強さを発揮する。
復活優勝とグランプリ連覇を目指して全力を尽くす
脇本雄太 福井 94期
脇本雄太は昨年のグランプリでは新山響平-新田祐大の2段駆けを8番手からあっさり捲って初優勝を達成している。今年も2月の全日本選抜から7月のサマーナイトフェスティバルまでのビッグレース6大会で連続優出と好調だったが、8月のオールスターで落車骨折して長期欠場を余儀なくされた。復帰戦となった11月の四日市記念では決勝9着、11月の競輪祭でも決勝8着に終わったが、獲得賞金ランキング8位で2年連続5度目のグランプリ出場を決めている。まだ本調子とはいえない状態だが、復活優勝と連覇をめざして全力を尽くす。
2年連続の出場で今年も狙うは主導権取りだ
新山響平 青森 107期
新山響平は昨年グランプリに初出場を果たしS級S班となったが、それでも徹底先行の姿勢を崩さず1年間走り続けてきた。GIの決勝では主導権を取れないケースもあったが、日本選手権の準決は佐藤慎太郎を連れて逃げての2着、6月の高松宮記念杯の準決も逃げ粘りの2着で突破している。11月の競輪祭ではグランプリ出場の賞金争いがかかっているにも関わらず、一次予選1と2とダイヤモンドレースで先行している、決勝進出はならなかったが獲得賞金ランキングで9位となり、もちろん今回も昨年に続いての主導権取りを狙ってくるだろう。
プレイバック KEIRINグランプリ2022
8番手からの怒涛の捲りで脇本雄太が初優勝
新山響平-新田祐大-守澤太志-佐藤慎太郎の北日本勢が前受け、その後ろに郡司浩平、平原康多、松浦悠士の単騎の3人が続き、8番手に脇本雄太-古性優作の近畿コンビの並びで周回を重ねる。3周回目に入ると松浦が上昇して新田に並びかけ、新田はすんなり車を下げて松浦が新山の番手に入る。そのままの並びで周回が続くが、赤板に入ると新田が松浦の外に追い上げる。すると今度は松浦がすんなり車を引いて3番手に下がり、新田が新山の番手に戻ったところで打鐘を迎える。新山は後ろの並びを確認してから力強く踏み込んで先行態勢に入り、同時に8番手で車間を空けていた脇本も反撃を開始、新山、新田、松浦、守澤、佐藤、やや車間の空いた6番手のアウトに脇本、古性、インに郡司、平原の並びで最終ホームを通過する。脇本のスピードがよく2コーナーで新田に並びかけ、新田が番手捲りを打つが、それを難なく交わして最終バックで先頭に立ち、近畿コンビの後ろに郡司と平原が続く。4コーナー手前から郡司が外のコースに進路を取り、脇本、古性、郡司の順で最後の直線に入り、古性と郡司が懸命に脇本に迫ろうとするが、脇本が4分の1車輪差で古性を振り切って先頭でゴールイン、2着に古性、3着に郡司が入る。
バンクの特徴 直線が長くゴール前での逆転劇が多い
周長は400m、最大カントは31度13分06秒、見なし直線距離は58.0m。立川は標準的な400バンクだが、直線距離は全国でも有数の長さを誇っており、ゴール前での逆転劇が一番の見どころとなっている。
2019年のグランプリでは脇本雄太が先行、新田祐大-佐藤慎太郎の北日本コンビが脇本の番手を奪い新田に絶好の展開と思われたが、ゴール前で新田と脇本の中を割った佐藤が初優勝を飾っている。ヤンググランプリも野口裕史がカマシ先行、4車身離れた森田優弥が必死に追いかけてゴール前で野口を交わした瞬間、さらにその外を松本貴治が強襲して優勝している。
3番手からの逆転劇だけではなく、7、8番手からの大外強襲もよく見られる。3日目
10RのS級戦の決勝では取鳥雄吾の先行を目標に最終3角から阿竹智史が番手捲りを打つが、8番手から捲り追い込んできた稲毛健太が最後の直線で前団を捕らえて優勝している。
ちなみに2019年のグランプリシリーズの決まり手を見てみると、全32レース(ガールズグランプリを除く)のうち1着は逃げが4回、捲りが12回、差しが16回、2着は逃げが6回、捲りが4回、差しが11回、マークが11回となっている。
やはり直線が長いので捲りが優勢で逃げは苦しく、先手ラインの選手が1着を取った回数も全体の3分の1以下の10回のみだ。ただし直線が長いため早めに捲りきっても後ろから差し交わされる危険性が高いので、脚力互角の捲り選手が複数人いるレースでは仕掛けのタイミングが難しく、捲り狙いの選手たちが牽制しあっているうちに逃げが決まってしまうケースもある。
先行は後方待機から打鐘過ぎの4角でカントを使って山降ろし気味にカマし、最終ホームで前団を交わしていく勢いで仕掛けるのが理想だが、直線が長いので2度、3度と踏み直しが効くスピードタイプでないと粘り込めない。