月刊競輪WEB

検索
第32回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントGI展望
レース展望 2023.10.04

第32回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントGI展望

#グレードレース展望

 第32回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントが2年ぶりに弥彦競輪場で開催される。9月の共同通信社杯競輪は深谷知広の9年ぶりのビッグレース優勝で幕を閉じたが、決勝戦に乗ったS級S班は新山響平のみと上位陣の不振が続いており、今大会も8月のオールスター競輪や共同通信社杯競輪で活躍した若手選手たちが勢揃いで世代交代がますます加速していきそうだ。

脇本が欠場明けでも近畿コンビはやはり強力だ

 開催初日のメインとなる日本競輪選手会理事長杯では5着までに入った5名が2日目のローズカップと3日目の準決へ無条件で進出できる。中心となるのはやはり脇本雄太と古性優作の近畿コンビだが、5月に4年ぶりに開催された全日本プロ自転車競技大会で優秀な成績を収めた雨谷一樹、菊池岳仁、山口拳矢の好走にも期待したい。


 古性優作は9月の共同通信社杯では3日目から途中欠場となったが、家事都合による欠場でもちろん調子に問題はない。一次予選は中西大の逃げを目標に1着、二次予選は清水裕友の捲りに続いての2着としっかり準決進出を決めていた。一方の脇本雄太は8月のオールスターでの落車の影響で共同通信社杯を欠場しており、今回も脇本の調子次第では古性の前回りがあるだろう。3月のウィナーズカップ決勝では古性が前回りで脇本が準優勝しており、近畿コンビはどちらが前回りとなっても強力だ。


 新田祐大は昨年の寬仁親王牌を優勝してグランドスラマーの仲間入りを果たしたが、脇本雄太と同様にオールスターでの落車の影響で状態は思わしくない。共同通信社杯の一次予選では打鐘から突っ張り先行で5着、二次予選も8着に終わり3日目から途中欠場となった。9月末時点での獲得賞金ランキングは10位とグランプリ出場の当落線上にいるので今回はなりふりかまわずの巻き返しを狙ってくるだろうし、5着までに入れば準決へ進めるので後ろの佐藤慎太郎を信頼しての先行策も十分に考えられる。


 菊池岳仁は5月の全プロの1kmTTで大会記録をマークして優勝し理事長杯に選出された。同じく雨谷一樹も全プロのスプリントで優勝して選出されている。対戦相手は強力だが、関東2人でタッグを組んでチャレンジャーらしいケレン味のない走りを見せてくれるだろう。菊池はオールスターでは一次予選1で捲って1着、一次予選2では逃げて5着に沈んだが平原康多の勝ち上がりに貢献している。雨谷一樹は共同通信社杯では二次予選で敗れたが、一次予選は新田祐大を破って1着を取っており今回も侮れない1車となりそうだ。


 山口拳矢は5月の日本選手権でGI初優勝を達成し、その勢いに乗って全プロのケイリンも優勝して理事長杯に選出された。しかし、オールスターのシャイニングスター賞で落車棄権となり、翌日の準決を走るも8着に敗れてしまった。共同通信社杯も二次予選Aで7着と敗れたが、一次予選は志田龍星の捲りに乗って1着、4日目特別優秀は3番手からの追い込みで1着と展開が向けば勝ち切れる脚はある。今回も完調とまではいかないかもしれないが、持ち味の自在戦で好位置を確保してチャンスを掴んでくるだろう。


 郡司浩平は今年は9月までに記念優勝が4回あるが、ビッグレースでの優出は6月の高松宮記念杯のみと苦しい戦いが続いており、連覇を目指して臨んだ共同通信社杯もまさかの一次予選敗退に終わっている。それでも次場所の松阪記念決勝では菅田壱道-新田祐大の2段駆けラインを5番手から捲って優勝しており、上がりも11秒0と好タイムをマークしている。近況は南関東の番手戦が多い郡司だが、久しぶりの自力勝負での優勝が大きな自信につながったはずで、今回も本来の郡司らしい強い走りをみせてくれるだろう。

新山響平が自分のスタイルを貫いて勝利を掴む

 開催初日の特別選抜予選2個レースでは各レースで2着までに入った4名が無条件で2日目のローズカップと3日目の準決へ進出できる。今年の特別選抜予選は新山響平、中野慎詞、眞杉匠、松井宏佑、犬伏湧也、嘉永泰斗などの近況好調な自力選手が揃っており、直線の長い弥彦バンクが舞台なだけにゴール前は混戦必至の激しい戦いとなるだろう。


 新山響平は共同通信社杯では上位陣が次々と脱落していく中、S級S班でただひとり決勝進出と意地を見せた。結果は準優勝に終わったが、単騎戦でも安易に捲りに構えることなく、最終ホームで渡邉雄太-深谷知広の静岡コンビを一気に叩いて主導権取りと自分のスタイルを貫いた走りには称賛の言葉しかない。9月末時点での獲得賞金ランキングは9位とグランプリ出場の当落線上につけているが、もちろん今回も若手選手たちを相手にこれぞ先行選手という走りを披露してくれるだろう。


 眞杉匠は8月のオールスターでGI初優勝を達成、9月の立川記念では連日関東勢を引っ張り森田優弥の記念初優勝に貢献した。しかし、共同通信社杯では一次予選は4番手から仕掛けきれずに3着、二次予選Aは島川将貴に叩かれて6着に敗れている。それでも3日目特選では北日本勢を連れ打鐘から前団を一気に叩いての主導権取りで2着、4日目特別優秀も佐藤慎太郎と2車ながら打鐘から先行態勢に入って3着としっかり軌道修正しており、もちろん今回も持ち味の先行勝負で勝ち上がりを狙ってくる。


 犬伏湧也は共同通信社杯では惜しくも準決で4着と敗れたが、一次予選では打鐘から先行態勢に入るとゴール前では4番手から捲り追い込んできた深谷知広を振り切っての逃げ切り、二次予選Aは坂井洋に執拗にフタをされて抜け出せなかったが、最終バックからインコースに切り込んで抜け出すと、捲りで先頭を切っていた嘉永泰斗をゴール前で交わして1着、上がりタイムは10秒6だ。オールスターで全国のファンを唸らせたパワフルな走りは健在で、今タイトルに最も近い男のひとりといっても過言ではないだろう。


 嘉永泰斗は共同通信社杯では一次予選が逃げ切り、二次予選Aは得意の捲りながらゴール前で犬伏湧也に交わされて2着だったが個人上がりタイムは10秒8、そして準決も9番手の展開となったが最終2角から仕掛けるとあれよあれよと前団を飲み込んで10秒7だ。おかげで決勝は嘉永泰斗-新山響平の2車単が1番人気に推されたが、新山響平との経験値の差が出てしまい嘉永は自分のタイミングで仕掛けられず7着に終わった。それでもスピードは折り紙つきなだけに、今回も得意の捲りでGI初優出を目指してくる。


深谷知広が6年ぶりのグランプリ出場を目指す


 深谷知広は今回は予選スタートだが、9月の共同通信社杯を優勝して獲得賞金ランキングが8位に浮上し6年ぶりのグランプリ出場が視界に入ってきている。ちなみに深谷のビッグレース制覇は14年8月のサマーナイトフェスティバル以来の9年ぶりとなり、同じく14年7月に弥彦で開催された寛仁親王牌も優勝している。21年に愛知から静岡へ移籍してからは南関東の選手たちをひたすら引っ張り続けてきた深谷だが、グランプリ出場が見えてきているだけに今回も共同通信社杯のときと同様に勝てる走りに徹してきそうだ。


 清水裕友は昨年のグランプリでは10番目の補欠選手となりS級S班から陥落、今回も予選スタートだが獲得賞金ランキングでは6位につけておりS級S班への復帰がかなり濃厚だ。今年はまだビッグレースでの優勝はないが、5月の日本選手権で準優勝、8月のオールスターで決勝4着と健闘、共同通信社杯決勝は9着に終わったが、勝ち上がり戦は町田太我、島川将貴、犬伏湧也の中四国の若手との連係から2、1、2着の好成績だ。もちろん今回も中四国の頼れる仲間たちとの連係から決勝進出を果たしてくるだろう。


 太田海也は9月に中国で開催されたアジア競技大会のチームスプリントとスプリントで金メダルを獲得と海外のレースでも確かな実績を残している。競輪の出走は8月のオールスター以来となるのでレース勘にやや不安はあるが、スピードは抜群なので今回も大活躍が期待できる。オールスターでは準決で吉田拓矢に捲られて4着に敗れたが、清水裕友の決勝進出にしっかり貢献している。5走すべてで主導権を取りきり1着3回、2着1回の好成績で、もちろん今回も徹底先行を貫いてくれるだろう。

プレイバック
2018年 第27回大会 脇本雄太
脇本雄太が快速捲りでGI連覇を達成


 脇本雄太-三谷竜生の近畿コンビが前受け、3番手に清水裕友-柏野智典の中国コンビ、単騎の浅井康太と平原康多が続き、7番手に渡邉一成-小松崎大地-佐藤慎太郎の北日本トリオで周回を重ねる。青板1コーナーから渡邉が上昇して脇本を抑えにいこうとするが、それを見た脇本が誘導員を下ろして突っ張り渡邉を出させない。結局渡邉は7番手まで下がって最初の隊列に戻り仕切り直しとなる。すると今度は3番手にいた清水が赤板の2コーナーから勢いよく飛び出し、打鐘とともに脇本を叩いて先頭に立つ。清水のダッシュでやや離れ気味になった柏野が懸命に追いかけていくが、中国コンビに続こうとした浅井は打鐘の3コーナーで三谷にブロックされて後退、さらに平原が浅井をすくって近畿コンビの後ろに続く。そして清水が先頭のまま最終ホームを通過、柏野もようやく清水に追いつき、そこから3車身ほど離れて脇本の態勢となるが、7番手にいた渡邉は下がってきた浅井が外に被さってしまい仕掛けることができない。GI初決勝の清水が快調に逃げるが、脇本が最終2コーナーから車間を詰める勢いで捲っていき、3コーナーで2番手の柏野に迫り、4コーナーで先頭の清水をとらえ、直線鋭く抜け出してGI初優勝を飾った8月のオールスターに続いてGI連覇を達成。三谷が続いて近畿コンビのワンツー決着となり、3着に平原が入る

バンクの特徴 弥彦バンク
直線が長くて追い込みが断然有利

 周長は400m、最大カントは32度24分17秒、見なし直線距離は63.1m。標準的な400バンクだが、直線が長いので追い込みが断然有利だ。逃げはもちろん捲りでも差し交わされるケースが少なくなく、自力選手には厳しいバンクとなっている。
 21年10月に開催された寛仁親王牌決勝では新山響平-新田祐大-菅田壱道の北日本勢が主導権を取るが、平原康多が北日本勢を分断して新田の後ろに関東勢が収まり、新田が最終バックから番手捲りを打つと平原が追走、最終4角を過ぎると長い直線を利した平原が余裕で新田を交わして優勝している。
 21年の大会の決まり手を見てみると、全48レースのうち1着は逃げが4回、捲りが18回、差しが26回、2着は逃げが4回、捲りが6回、差しが17回、マークが21回となっている。やはり逃げは苦しく、先手ラインの選手が1着を取ったレースも全体の3分の1以下の15回しかない。逃げ切りは4回あるが、そのうちの3回は敗者戦で、ただひとり新山響平だけが準決で見事な逃げ切りを決めている。
 大会のベストタイムは10秒7で、2日目のローズカップで新田祐大が最終3角8番手から大外を捲り追い込んでマークしている。ただし10秒台の上がりタイムはその1回きりで、バンクはやや重く、裏手にそびえ立つ弥彦山から吹き下ろす風の影響も受けやすいので、ほとんどのレースは11秒台中盤のタイムで収まっている。
 それでも直線が長いので捲りが決まりやすく、力のある選手ならば7、8番手からの逆転も可能だ。2日目9Rの二次予選Aでは長島大介が地元の諸橋愛を連れて先行、清水裕友は7番手の展開となったが、清水は最終3角から車を外に持ち出しイエローライン上を捲り追い込んで1着、諸橋は1輪差で2着になっており決まり手は差し-差しだ。弥彦は直線が長くてスピードに乗りにくいので後方になった選手は遅めの捲り追い込みが有効で、先手ラインの選手と捲り追い込んできた選手の差し-差しの決まり手の出現率が高い。


この記事をシェア

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE

related articles