ファン投票で1位と2位に選ばれた脇本雄太と古性優作の近畿コンビが中心だが、サマーナイトフェスティバル3連覇を達成した松浦悠士の逆転も十分だ。もちろん新山響平が先導役を務める北日本勢も強力で、地元戦で巻き返しを狙う関東勢も侮れない。
近畿コンビがファン投票でも上位を独占
オールスター競輪はファン投票によって出場選手が決まるのが特徴で、ファン投票第1位から第9位までのベストナインが初日のドリームレースに、第10位から第18位までの9名が2日目のオリオン賞レースに出場する。しかし、両レースとも位置づけは一次予選で、出走選手たちはポイントの優遇処置はあるものの予選スタートの選手たちと同様に2走してポイントを稼がねばならず、獲得ポイントの上位者9名だけが準決勝へ無条件で進出できるシャイニングスター賞へ勝ち上がれるので、ファン投票で上位に選ばれたスター選手たちも1走目から気の抜けない戦いを強いられることになる。
ファン投票第1位は脇本雄太だ。脇本は、今年はまだビッグレースでの優勝はないが、前半戦のビッグレースはすべて優出して圧巻のスピードを披露しており昨年の第6位からの納得のジャンプアップだ。7月のサマーナイトフェスティバルの決勝も番手追走の松浦悠士に交されて準優勝だったが、準決では上がりタイム10秒6をマークしてバンクレコードを更新と状態も申し分ない。昨年の大会ではドリームレースを逃げ切り、以後は捲りの4連発で完全優勝を達成しており今回も先行・捲りでの押し切りを狙ってくる。
ファン投票第2位は古性優作だ。古性は2月の全日本選抜を連覇、6月の地元戦の高松宮記念杯も連覇しており、脇本雄太と同様に昨年の第4位からのジャンプアップだ。サマーナイトの準決では新山響平の逃げを捲るも松浦悠士に捲り返されて4着と優出できなかったが、3日目特別優秀では眞杉匠の逃げを5番手から捲って南修二とワンツーを決めており調子に不安はない、昨年のドリームレースでは脇本の逃げを追走して近畿ワンツーを決めており、今年ももちろん脇本をしっかり追走してワンツーを決めてくれるだろう。
ファン投票第3位は松浦悠士で昨年の第2位からワンランクダウンしたが、3月のウィナーズカップでは2度目の優勝、サマーナイトの決勝では脇本雄太の番手を主張し脇本の逃げをきっちり差し切って3連覇の偉業を達成と絶好調だ。今年のドリームレースは近畿コンビと北日本勢の2分戦で、松浦、郡司浩平、平原康多の3人は単騎戦となりそうだが、3人の中では調子も自在性も一枚上と言ってよく、近畿コンビと北日本勢との激しい叩き合いがあれば松浦の逆転一発が十分に期待できるだろう。
新山響平は昨年のファン投票は第20位だったが、昨年の競輪祭でタイトルホルダーの仲間入りを果たし今年は第8位と大幅にジャンプアップした。S級S班となっても徹底先行を貫いている走りがファンから絶大な支持を受けているのは言うまでもない。新田祐大も昨年は第10位だったが、昨年の寛仁親王牌でグランドスラムを達成して今年は第6位でドリームレースに復帰、守澤太志も昨年の第13位から第7位にジャンプアップ、佐藤慎太郎は昨年の第5位から第9位とダウンしたが4人揃った北日本ラインは強力だ。
平原康多は昨年のファン投票は第1位だったが、近況は落車の影響で成績が安定せず今年は第5位にダウンした。それでも長期欠場明けの高松宮記念杯の準決でまたもや落車に見舞われたが、次場所の前橋記念の準決では眞杉匠の逃げに乗って2着で突破して優出、サマーナイトの準決も目標の眞杉匠が新田祐大に捲られたが直線鋭く伸びて2着で優出と調子は決して悪くはない。昨年の大会ではやはり準決で落車に見舞われて優出を逃しているだけに、今年こそはの意気込みでファンの期待に応える走りを見せてくれるだろう。
注目のヤングパワーが勢揃いで混戦必至
オリオン賞レースは深谷知広と浅井康太の2人が90期台で年齢も30代だが、残り7人は100期台でまさに次代の競輪界を担う実力者が勢揃いの組み合わせとなった。山口拳矢と浅井康太の中部コンビ、眞杉匠と吉田拓矢の関東コンビ、町田太我と清水裕友の中国コンビは連係だろうが、深谷知広、犬伏湧也、嘉永泰斗の3人は単騎になりそうな細切れ戦で、展開ひとつで誰が勝っても不思議ではない混戦レースとなるだろう。
深谷知広は昨年のファン投票は第9位だったが、今年はワンランクダウンで第10位となった。それでも全盛期の頃の強さがファンの心に強く刻み込まれているだけに今でも人気は高く、33歳とまだまだ衰える年齢ではないので奮起を期待したい。昨年3月のウィナーズカップ以降はビッグレースでの優出はないが、今年6月の高松宮記念杯では捲りで3勝を挙げ、6日目特別優秀では上がり10秒7の好タイムをマーク、7月のサマーナイトフェスティバルの予選では逃げて和田真久留とワンツーと展開がハマればやはり深谷は強い。
山口拳矢は昨年のファン投票は第12位だったが、5月の日本選手権でGI初優出、初優勝の快挙を成し遂げ今年は第11位とワンランクアップした。日本選手権のあとはややリズムを崩して途中欠場が続いたが、サマーナイトでは準決を脇本雄太に続く2着で突破して優出を果たしており、長い距離は踏めないがショート捲りのスピードは抜群だ。一方の浅井康太は昨年の第11位から今年は第15 位とダウンしている。サマーナイトの予選では山口を目標に3着と健闘しており、今回も山口との連係から復活の走りを期待したい。
清水裕友は、ファン投票は昨年の第7位から今年は第14位と落ちてしまったが、日本選手権では準決を捲りの1着で突破すると決勝も犬伏湧也の逃げに乗って準優勝と健闘した。しかし、高松宮記念杯では予選2で事故棄権となり以後は途中欠場、サマーナイトも準決で9着と波に乗りきれないでいる。それでもサマーナイト終了時点での獲得賞金ランキングでは6位につけておりS級S班復帰を目指して今回は死力を尽くしてくるだろうし、サマーナイトの3日目特選では犬伏湧也の逃げに乗って1着と調子も決して悪くはない。
吉田拓矢は、今年はS級S班から陥落しファン投票も昨年の第8位から第17位と落ちてしまった。今年はビッグレースでの優出もない状態だが、6月の久留米記念ではやはり準決で敗れたが捲りで3勝を挙げて復活の気配だ。とりわけ初日特別選抜では脇本雄太と新山響平を相手に捲りで完勝して上がりタイムも10秒8をマークしている。続くサマーナイトも準決で敗れたが、初日予選は眞杉匠の逃げに乗って1着、3日目特別優秀は捲りで2着になっており、今回も相性抜群の眞杉との連係から勝ち星を狙ってくる。
松井宏佑が3大会連続のビッグ優出を目指す
松井宏佑は昨年9月に新山響平といっしょにナショナルチームを引退して競輪に専念することにした。そして新山は昨年の競輪祭でみごとにGI初優勝を飾ったが、松井も近況はビッグレースでの活躍が目覚ましい。5月の日本選手権では二次予選で敗れたが4走とも主導権を取って2着が2回、6月の高松宮記念杯の準決では新山の逃げを捲っての1着通過で20年の競輪祭以来のGI優出を決めている。7月のサマーナイトフェスティバルも優出と好調で、今回も3大会連続のビッグレース優出を狙ってくる。
寺崎浩平はナショナルチームの一員として世界の舞台で活躍しているが、競輪でも昨年のオールスターでGI初優出と実績を残している。オールスターの準決では自身は3着で古性優作の1着に貢献と近畿勢にとっては今回も頼もしい味方となるだろう。一次予選1は捲りの1着で上がりタイムは10秒8とバンクとの相性もいい。今年の日本選手権では一次予選で4着と敗れたが、4日目特一般は逃げ切りで三谷将太とワンツー、6日目選抜は逃げて3着で椎木尾拓哉の1着に貢献しており今回も近畿勢を連れて逃げまくる。
121期の中野慎詞は3月にカイロで開催された2023UCIトラックネーションズカップ第2戦の男子ケイリンで金メダルを獲得している。競輪の出走は少ないが、昨年9月の青森記念でGⅢに初出場して3連勝で優出、12月の伊東温泉記念も3連勝で優出とカーボンからクロモリの自転車に乗り換えてもやはり強い。同じく121期の太田海也も2月のネーションズカップ第1戦(ジャカルタ)の男子スプリントで銀メダル、第2戦では男子ケイリンと男子スプリントで銅メダルを獲得しており、GI初出場の2人が競輪界に新風を巻き起こす。
2018年 第61回大会 脇本雄太
脇本雄太が逃げ切りで初タイトルを獲得
渡邉一成-中村浩士の即席コンビが前受け、3番手に竹内雄作-浅井康太-金子貴志の中部トリオ、6番手に脇本雄太-古性優作-村上義弘の近畿トリオ、最後尾に単騎の山崎賢人の並びで周回を重ねる。赤板の1センターから竹内が上昇し前団を押さえて先行態勢に入ると、渡邉は車を下げて4番手に引く。4番手の外には中部トリオを追ってきていた脇本がいたが、脇本は打鐘とともに踏み込んで主導権を狙いにいく。合わせて竹内も全開でスパートして両者の主導権争いとなるが、最終1センター手前で脇本が竹内を叩いて先頭に躍り出る。古性は3車身ほど離れながらも懸命に脇本を追うが、3番手の村上は内から浅井に捌かれて後退する。同時に最後尾にいた山崎が発進するが、渡邉が山崎を弾いてから捲っていく。脇本は快調に逃げ続け4コーナーを先頭で通過、3車身離れて古性が続くが浅井が古性に並びかけ、渡邉も迫ってくる。脇本はそのまま先頭でゴールして初タイトルを獲得、2着に浅井、3着に渡邉が入る。
バンクの特徴
周長は400m、最大カントは29度26分54秒、見なし直線距離は47.6m。西武園は、元は500バンクだったが、1994年に400バンクに改修された。そのため旧バンクの名残から400バンクとしては比較的カントが緩く直線も短いので333バンクに近い性格を持っており、先行選手が有利と言われている。
FIやFII開催では1着の決まり手が捲りよりも逃げのほうが多く、まさに333バンクという印象だが、輪界のトップスターが集うGI開催ではやはり捲りのほうが優勢だ。
昨年8月に開催されたオールスターの決まり手を見てみると、全63レース(ガールズ2個レースを除く)のうち1着は逃げが9回、捲りが25回、差しが28 回、マーク(1着入線選手が失格での繰り上がり)が1回、2着は逃げが11回、捲り8回、差しが17回、マークが27回となっている。
昨年の大会のベストタイムは10秒7で3日目6Rの一次予選2で北津留翼が8番手から捲ってマークしている。そのほか脇本雄太が2回、寺崎浩平が1回10秒台をマークしているが、見た目は333バンクでもカントが緩いので高速バンクとは言えない。ほとんどのレースは11秒台中盤あたりで決まっており、先行ならば12秒台でも逃げ切れるケースもある。
捲りは400バンクの定石どおりに最終2角から仕掛けるのがベストで、力のある選手なら7、8番手からでも捲り切れる。しかし、カントが緩いので3角でスピードに乗り切れないと先手ラインを乗り越えられずに不発というパターンも多い。
先行は打鐘から仕掛けて一気に主導権を取ってしまうのがベストだ。333バンクに近いために展開が目まぐるしく変わってもつれやすいので、思い切って早めに主導権を奪えば後続のもつれを尻目にまんまと逃げ切れる。
追い込みは直線が短いので番手必須だが、展開次第では3、4番手の選手が最後の直線で車を外に持ち出し、イエローライン上を踏み込んでいけば頭に突き抜けることができるし、コース取りのうまい選手ならばインを突いてからの中割り強襲が決まることもある。