今月のMVP 古性優作(32)大阪100期 S級S班
今月は8、1、1、1、❶着と猛烈なチャージでたたみかけ地元GⅠ「第74回高松宮記念杯競輪」を制した古性優作のMVPで異論は無いだろう。ただでさえ重圧がのしかかる地元開催を、前年度のディフェンディングチャンピオンとして迎えたのだから開催前から背負うものは盛りだくさんだった。そのなかで見事に結果を出したのは古性の並々ならぬ勝負根性と執念以外の何物でもない。
4連勝で飾った怒涛の反撃もすごいが、勝負の肝は初日の7R西予選1ではなかったか。ここはダントツの一番人気を背負ったが、ホームから巻き返した際に中本匠栄と接触をして落車。再乗して8着に入線したものの、1走目から絶体絶命のピンチに見舞われた。幸いにして軽傷で済み、しかも「ポイント制」という勝ち上がり制度にも助けられ、2走目に1着を手にしてポイントを積み直し軌道修正に成功した。その後の進撃は目覚ましく、あっという間に4連勝でVを飾った。
表彰式では紆余曲折のシリーズを回顧してか思わず感涙。「初日にファンの一番人気に推されていたのに迷惑をかけてしまった。ずっと気になっていました」と普段クールな装いを崩さない古性の感極まった男泣きにスタンドは大きく湧き、地元大団円で終結した。
レース 岸和田競輪「第74回高松宮記念杯競輪 4日目8R東日本二次予選
北日本勢4車の結束
決勝までの勝ち上がり戦は東西対抗の形式を取る独自の番組概定を敷く当大会。ここも東日本が地区ごとに分かれて結束し狭き門を競い合った。北日本勢は新山響平を先頭に小松崎大地―渡部幸訓―大森慶一と4車が結束した。
大森慶一が8番車ながら得意のダッシュを効かし猛烈にスタートを決めると、新山が前受けに成功した。こうなれば新山の得意パターンで、赤板では和田真久留を突っ張り、打鐘過ぎから飛んできた吉田拓矢をも突っ張りペース駆け。番手の面々も新山の勢いにノリノリで、小松崎は絶妙に車間を空けて吉田を牽制し、渡部と大森は降りてきた吉田を懸命にいなしながらも内を締め別線に反撃の隙を与えなかった。終わってみれば新山が押し切りラインで連独占。しかも大森が4着に続く〝ワンツースリーフォー〟で完全勝利を収めた。新山は「ラインのおかげでいいレースができたと思います」とうなずいたが、それよりも小松崎、渡部と3人が揃って口にしたのは大森への賛辞だった。
新山が「大森さんが前を取ってくれたので絶対に突っ張ろうと思った」、小松崎も「ただでさえ4番手で厳しいのにSを取って下さった。ラインの力で決まったレース」、渡部も「4人の気持ちがひとつになれた走りだったと思います」と続けた。
このレースの勝ち上がりは3着権利。つまり4番手の大森の位置では勝ち上がる可能性は3人より遠のく。それでも躊躇なく「4番手」を即決し、誰よりも早くスタートを決めた大森の度胸と心意気が3人の胸を打った。ちなみに大森は若かりし頃、ナショナルチームに在籍し1kmTTの日本記録を樹立するなど、スプリンターとして活躍していたダッシュマン。スタート取りには長けていた。新山が「レース後に大森さんが来て『強かったなあ。決まって良かったね』と喜んでくれたんです。ご自身は4着じゃ勝ち上がれないのに…。うれしかったです」と明かしたように、自己犠牲を払ってでも素直に仲間の勝利を喜ぶことができる非常に人間味がある選手のようだ。