午後6時すぎ。競輪場にあるラーメン屋に顔を出す。
えっ?金色の髪をポニーテールに結んだ、Tシャツ姿の女性客が一人でラーメンを食べているじゃないですか。そこへ店主のマサさんが声をかけてきた。「カナダから来た20代のバックパッカー。街を歩いていた女性グループに、おいしいラーメン屋さんありますか?と聞いたら、ここを教えてくれたんだって」。ほんと?ありえない話だけど。教えた女性も女性だけど、このネット時代に、人と人でジカに情報収集している若い娘もいるんだな…。
「ヤミー?」と女性に聞いているマサさん、このおやじが英語できるんだというのにはもっと驚かされた。「競輪を教えてあげるんだ」とこちらに向かってにっこり。女性もこちらに顔を向けて、微笑んでくれる。
心がほっこりしているところに常連のトミさんがやってきた。俺もマサさんと一緒に彼女に競輪を教える気になっていたんだけどな。トミさんに女性の話をしてあげる。
俺、英語ダメだからとトミさんが言うので、残念ながら、こっちの話に付き合ってあげることに。話題は123期生のルーキーシリーズ。師匠が誰かをKEIRIN.JPで調べ 、ああだこうだ想像するのが楽しいんだとトミさん。かってに想像するだけなんだけど、強い弱いに関係なく、レースっぷりがしっかりしている選手の弟子だと、その姿勢を受け継いでいるなと感じるのが楽しいんだとか。
それとルーキーらしからぬレースをしていた新潟の牧田悠生が印象に残ったのは意見一致。宇都宮は決勝を逃したものの、最終日は内に詰まり、2センターで後退しかけたが、直線で内を踏み直して初勝利。2戦目の福井は2日目の予選をまくりで勝って、決勝は3着。ダッシュがいいし、単騎の競走でも位置取りがうまい。競輪をしていたのが印象的で、7月から、彼より力が上で、彼よりうまい選手たちに交じってどう戦っていくのか。どういう選手になっていくのか、追ってみたいと感じさせる選手だ。
トミさんと話しながらも、マサさんの競輪教室も聞き逃さない。聖徳太子か(今は厩戸王と表記されるらしいけど)。ポイントはこの2点。
1、一番強いラインから買う。
ラインの強弱は前2人の競走得点を足して2で割った数字で決める。
2、ラインが3人でABCと並ぶなら、3連単の車券はABC、BAC、BCAと買う。
彼女にマークシートを書かせ、「車券買ってくるから、店番頼む」と言い残して一緒に出ていった。前掛けをした初老の男と、20代のカナダ女性の2人連れは競輪発祥以来、競輪場で初の組み合わせだと思う。でもこの車券が場外発売の弥彦ナイター競輪9Rで見事的中。100円ずつ3点買った車券は2090円になった。大声をあげて歓喜し合う2人はまた一緒に払い戻しにいったのでした。
本国に帰ったとき、彼女はこの思い出をどのように語ってくれるんだろ。