第77回日本選手権競輪が平塚競輪場で開催される。同じ平塚バンクでの昨年のグランプリを制した脇本雄太と古性優作の近畿コンビを中心に推したいところだが、脇本が腰痛という爆弾を抱えているだけに優勝争いは予断を許さない。今回も混戦模様となるならば松浦悠士を始めとする自在性の高い選手の浮上があるだろう。
古性優作との連係で脇本雄太が巻き返しを狙う
脇本雄太は3月のウィナーズカップでは初日特別選抜予選こそは逃げて2着で山田庸平とワンツーを決めたが、2日目毘沙門天賞は8番手から仕掛けきれずに6着、準決は落車のアクシデントもあっての流れ込みの3着だった。決勝は古性優作が前回りとなり脇本は慣れない番手戦ながら2着と健闘したが、今回も脇本の状態がシリーズの流れを決める最大のポイントとなるだろう。それでも人一倍責任感の強い脇本だけに、自身の状態の如何にかかわらず、白のチャンピオンジャージに恥じない走りをきっと見せてくれるだろう。
古性優作はウィナーズカップの決勝は残念ながら失格に終わったが、新山響平が嘉永泰斗を叩いて主導権を握るとすかさず発進して北日本ラインに襲いかかっており、仕掛けのタイミングは絶妙だった。タラレバだが、あそこで落車がなければ脇本雄太の突き抜けがあったかもしれない。準決では5番手から捲り2着の新田祐大に2車身差をつけての圧勝とスピードも抜群だ。2月の全日本選抜では脇本の逃げに乗って優勝しているが、今回も脇本の状態次第では再び古性が前回りで近畿ワンツーを狙ってくるだろう。
新山響平は初のS級S班として迎えた今年はスタートがあまりよくなく、全日本選抜では準決で敗れてしまったが、ウィナーズではしっかり優出してファンの期待に応えている。準決は山田庸平の捲りを追っての追い込みでの1着だったが、二次予選は松井宏佑と谷口遼平の好調な2人を相手に前受けからの突っ張り先行に出て2着に粘り、小松崎大地とワンツーを決めてS級S班の貫禄を示している。決勝も結果は5着だったが主導権取りと自分の務めを果たしており、もちろん今回も北日本勢の先導役として活躍してくれるだろう。
次期タイトル候補と目されながらも優勝になかなか手が届かずファンをやきもきさせているのが守澤太志だ。今年も全日本選抜で準優勝、ウィナーズカップでは決勝3着と安定感は相変わらず高い。ウィナーズカップの二次予選では7番からの深谷知広の仕掛けに離れ気味になったが、気迫で最終バックで追いつくとゴール前では2分の1車輪差で深谷を差し切って鋭さを発揮している。決勝ではまたもやゴール前での詰めの甘さを露呈してしまったが、今回も新山響平や新田祐大らの頼もしい仲間たちとともに勝ち上がっていく。
再びの地元戦で郡司浩平がシビアに攻める
郡司浩平は2月の静岡記念で渡邉雄太の逃げを番手捲りした深谷知広を差し切って今年初優勝を飾り南関東の結束力を力強くアピールしたが、全日本選抜は準決で4着敗退、ウィナーズカップも準決で4着敗退とあと一歩足りない印象だった。ウィナーズカップの準決は目標の野口裕史が主導権を握ってくれたが、犬伏湧也の巻き返しを大きく牽制したすきに内をすくわれての4着だった。近況は番手回りの多い郡司だが、昨年のグランプリに続いての地元戦だけに、勝つためにどこまでシビアになれるかが課題となるだろう。
深谷知広は全日本選抜では初日特別選抜予選で勝ち星を挙げているが、その後が続かず残り3走は凡走してしまった。ウィナーズカップでも初日特別予選は仕掛けきれずに5着に終わったが、さすがにそこで反省したのか残り3走はしっかり主導権を取りきっている。準決は深谷のダッシュに和田健太郎が離れてしまい新田祐大に番手に入られたために9着に終わったが、二次予選は守澤太志とワンツー、4日目特選も佐藤慎太郎とワンツーとやはり深谷の先行力は非凡で、今回も積極的な仕掛けで地元勢を盛り上げてくれるだろう。
松浦悠士は本調子とは言えない状態が続いていて、全日本選抜では準決敗退、1月の豊橋記念、3月の松山記念でも優出できずにいた。しかし、ウィナーズカップの準決では目標の犬伏湧也が不発の展開ながら3着に食い込み、3年ぶり2度目のウィナーズカップ優勝を果たしている。決勝は単騎戦だったが周回中は脚を溜めるだけ溜め、一瞬のチャンスを逃さずにウィニングロードを駆け抜けた判断力と俊敏さはさすがとしか言いようがなく、この優勝をきっかけに不振を脱して状態は確実に上向いてくるだろう。
犬伏湧也は3月の大垣記念決勝では古性優作や平原康多らを相手に大ガマシを打ち、2着の古性優作に5車身差をつけて記念初優勝を達成、上がりタイムも10秒8と完勝だった。しかし、勢いに乗って参戦したウィナーズカップでは二次予選こそは逃げ切りだったが、準決では野口裕史に先手を取られ、犬伏は捲るも郡司浩平にブロックされて不発と手厳しい洗礼を受けた。さすがにビッグレースの準決ともなると単純な脚力勝負だけでは勝てないが、ウィナーズカップの失敗を糧に今度こその優出を期待したい。
平原康多が後輩たちとともに関東を盛り上げていく
平原康多はウィナーズカップの準決では残念ながら落車・再入となったが、4日目特選では目標の森田優弥が内に詰まる苦しい展開から自ら捲って1着を取っており、上がりタイムも11秒3と申し分なく状態に不安はない。2日目毘沙門天賞では決勝戦と言ってもおかしくない豪華メンバーだったが、森田優弥の逃げに乗り新田祐大の巻き返しに合わせての番手捲りで1着と40代を迎えても元気いっぱいだ。今回も拓矢と有希の吉田兄弟、眞杉匠、坂井洋らの若手選手たちのサポートを受けて関東を盛り上げていく。
眞杉匠はあっせん停止でウィナーズカップは不出場だったが、全日本選抜では準決で敗れたものの2勝をマークと大活躍だった。初日特別選抜予選では新田祐大に叩かれたもののゴール前で3番手から追い込んで1着、4日目特選は坂井洋の絶妙な援護を受けて逃げ切っている。そしてなによりも眞杉は21年の京王閣の大会でG1初優出を決め、昨年のいわき平の大会でも優出と日本選手権との相性が抜群だ。もちろん今回もあっせん停止の期間にしっかり練習を積み重ねてきたはずで、3年連続の優出が期待できる。
浅井康太はウィナーズカップでは連日展開に恵まれず準決で敗れたが、レース内容は決して悪くなかった。一次予選は8番手になるも最後は捲り追い込んで3着、二次予選も8番手となったが大外を捲り追い込んで3着と状態はよさそうだ。谷口遼平が引き続き調子がよさそうだし、119期の新星・志田龍星がG1初出場なのも浅井にとっては頼もしい。志田は1月の豊橋記念では4走の3走で主導権を取り、一次予選は吉田敏洋が1着、二次予選は浅井が2着、4日目特別優秀では浅井とワンツーを決めており、今回も志田との連係があれば浅井にチャンスが巡ってくる。
山田庸平は、全日本選抜は二次予選敗退に終わったが、次場所の松山記念決勝では最終バック8番手から捲って優勝している。そしてウィナーズカップでは初日特別選抜予選で脇本雄太の逃げを番手から差し切っての1着で自信をつけ、2日目毘沙門天賞は3着、準決は郡司浩平が犬伏湧也を大きくブロックしたスキをついて逃げる野口裕史の番手を奪い、番手捲りの2着で優出している。決勝は4着に終わったが、ウィナーズカップでは嘉永泰斗もビッグ初優出と大活躍しており、今回も九州勢の一発が期待できる。
2017年 第71回大会 三谷竜生
3番手奪取の三谷竜生が直線伸びてG1初制覇
深谷知広-浅井康太の中部コンビが前受け、3番手に平原康多-武田豊樹の関東コンビで単騎の守澤太志が続き、6番手に三谷竜生-桑原大志、8番手に山田英明-園田匠の九州コンビの並びで周回を重ねる。青板周回のバックから山田が上昇を開始、赤板前に誘導を下ろして先頭に立つ。深谷はすんなり8番手まで下がり、九州コンビを追った三谷が3番手、平原が5番手、守澤が7番手となるが、打鐘から深谷が一気にスパートし、2センターで山田を叩いて主導権を握る。同時に深谷の上昇に合わせて中バンクに上がっていた山田の内を三谷がすくって3番手を奪取したところで最終ホームを通過する。続いて平原が山田の横に追い上げ、山田が二度三度と車を大きく振って抵抗するが、それをしのいだ平原が5番手を確保、山田は後退していく。平原は3コーナーから捲るが車が伸びず、浅井が番手絶好の展開かと思われたが、4コーナーから追い込みをかけた三谷が浅井の牽制を乗り越えて中バンクを鋭く伸び、2着の桑原に1車身の差をつけてG1初制覇、浅井は3着に終わる。
戦法的な有利・不利がなく力を発揮できる
周長は400m、見なし直線距離は54.2m、最大カントは31度28分37秒。カントも直線の長さも標準的なバンクで、走路もクセがなくて走りやすいので戦法的な有利・不利はなく力どおりの決着になることが多い。
ただしバック側が相模川のうえに海も近く、バンク内には池もあるので、天候による湿度の変化や相模川を通って吹き寄せる海風の影響でバンクが重くなることもある。
昨年末に開催されたグランプリシリーズでは3日間天候に恵まれ風も比較的穏やかだったが、さすがに冬場の開催だけあってほとんどのレースが11秒台後半の上りタイムで決まっており、11秒台前半のレースは全33レースのうち8回だけだった。
しかし、18年5月に開催された日本選手権ではやはり6日間雨は降らなかったが、3日目は風速3m、4日目は風速2mと風の影響が強かったにもかかわらず、全67レースのうち36レースが11秒台前半の上がりタイムで決まっており、10秒台のレースも5回出ている。初日2Rの一次予選では中川誠一郎の捲りを差した荒井崇博が10秒4のバンクレコードを叩き出しており、もちろん今回も気候のいい5月開催だけに好タイムのレースが期待できるだろう。
昨年のグランプリシリーズの決まり手を見てみると、全32レース(ガールズグランプリ1個レースを除く)のうち1着は逃げが6回、捲りが12回、差しが14回、2着は逃げが5回、捲りが7回、差しが10回、マークが10回となっている。
冬場の重いバンクだったにもかかわらず逃げがかなり健闘しており、戦法的な有利・不利がないことがよくわかる結果となっている。2日目10Rの準決では最終バック9番手から仕掛けた浅井康太が最後の直線ではイエローライン上を鋭く伸びて11秒1の上がりタイムをマークしている。また初日10Rの特別選抜予選では南修二が最終3角8番手からインに突っ込み、最後の直線では中コースを鋭く伸びで11秒0をマークしており、直線ではとくに伸びるコースはないものの自力型も追い込み型も存分に力を発揮できるバンクとなっている。