いつものように競輪場のラーメン屋に顔を出すと、客席のテーブルで店主の将さんが誰かと話していた。FⅠの場外発売で平日の午後1時過ぎだからなのか、うまいラーメンを出すのに、行列とはほど遠いな。
お客は華奢で、天然パーマ。後ろ姿でもすぐに誰かわかった。この店の常連、トミさんだ。将さんがこちらに気がついて手を挙げると、トミさんも振り返って、ほんのわずか手を挙げた。テーブルの上には群馬の銘菓「旅がらす」。群馬県に行ってたのか。でも寬仁親王牌はとっくに終わっているのに、何故?
トミさんは時間をかけて、関東地区プロ自転車競技大会、通称、地区プロを見に行ったらしい。お金を賭けない自転車競走をわざわざ見にいく人間にはとうてい見えないんだけど、本人は自転車競技自体が好きなんだと言い張る。
地区プロで印象に残った選手は?と聞くと、神山拓弥の名前があがった。ケイリンに出場。競輪では追い込み選手なのに、予選も準決勝も後方からたたき、残り2周以上も逃げて、1着、2着。カーボンの自転車で、後輪はディスクホイール。ギアもかけているからだけど、迫力があったよと。ちなみに決勝は前受けから中団で被って、5着入線(優勝は眞杉匠)。
さっそくKEIRIN.JPで調べたトミさん。名古屋FⅠに神山の名前を見つけて、狙ったらしい。初日特選は森田優弥の先行に乗って1着。2車単も3連単も3番人気。準決勝は後輩の中村隆生が駆けてくれたのに、別線にまくられて6着。最終日は目標にした武田亮が不発で、2センターから内へ入っていったけど、直線の伸びが足りずに5着。あれっという結果だったが、トミさんは説明する。地区プロであれだけのレースをして、中1日での参加だから、疲れてたんだよと。優勝した森田も、2着の柿澤大貴も地区プロに出ていたんですけど…。
そして「単騎になって、人気薄の時が狙い目。あの馬力があれば、ひとまくりだよ」。神山は変わらず狙っていくとのこと。ケイリンと競輪は別競技だと思うんだけど。でもトミさん、正直に言ってください。前橋へ行ったのはやっぱり、競輪で狙える選手を探すためだったんでしょ?