第64回朝日新聞社杯競輪祭が競輪発祥の地・小倉競輪場で開催される。今年もガールズグランプリトライアルレースと同時開催で6日制のナイターで実施される。優勝候補の筆頭はやはり脇本雄太だろうが、史上4人目のグランドスラマーとなった新田祐大の走りも楽しみ。例年になく熾烈を極めるKEIRINグランプリの出場権をかけた賞金争いからも目が離せない。
寬仁親王牌
新田祐大が自慢のダッシュ力でファンを魅了する
KEIRINグランプリの出場権をかけた今年最後のGI戦がいよいよ幕を開ける。今年GIを優勝してすでに出場権を獲得しているのは古性優作、脇本雄太、新田祐大の3名だけで、残り6名は競輪祭の優勝者と競輪祭終了時点での獲得賞金上位者から選ばれる。昨年は直前まで獲得賞金ランキングで8位につけていた新鋭・山口拳矢のグランプリ初出場が期待されていたが、残念ながら山口は一次予選2で落車して途中欠場となり、11位につけていた吉田拓矢がGI初優勝を飾って出場権を獲得、山口は次点となった。今年も最後の大逆転が十分にありそうで、最終日まで一瞬たりとも気が抜けない熾烈な戦いとなるだろう。
新田祐大は10月の寬仁親王牌を優勝して史上4人目のグランドスラマーとなった。新田は5月の落車の影響でずっと本調子とは言えない状態が続いていて獲得賞金ランキングも18位と低迷していた。寬仁親王牌の決勝も勝負どころで内に詰まり誰もが「終わった」と思った瞬間、ほぼゼロ発進の状態からインを突いて一気にトップスピードへ持っていき先頭でゴールインした。あの加速の凄さは誰にも真似できないものであり、今回も決して調子は万全と言えないかもしれないが、グランドスラマー新田が自慢のダッシュ力でファンを魅了してくれるだろう。
寬仁親王牌で最強の走りを披露したのが守澤太志だ。結果は準優勝だったが、2センター9番手から捲り追い込んでの2着だ。激しい展開で誰もが脚を使わされている中でひとりだけサラ脚だったとはいえ、直線での伸びは信じられないくらいのものだった。準決でも9番手の展開から2着に突っ込んでおり、おかげで獲得賞金ランキングも7位から5位にアップして3年連続3回目のグランプリ出場が見えてきた。それどころか、今の守澤の状態ならば念願のGI初制覇も決して夢ではないだろう。
脇本雄太は今年は5月の日本選手権と8月のオールスターを優勝、同じくGIを2度制覇している古性優作とともに競輪界を席巻してきた。とりわけオールスターは競輪祭と同じ6日制のナイターながら脇本は5連勝の完全優勝を達成しており、今回も完全優勝を期待するファンも多いだろう。ただ気になるのは9月の共同通信社杯の敗戦で、二次予選Aでは太田竜馬の逃げで脇本は大きく離れた8番手になってしまい捲り切れなかった。今回も先行意欲満々の若手が多数出場しているだけに、ますます厳しくなる脇本シフトをいかに切り抜けていくかも見どころになるだろう。
郡司浩平は9月の共同通信社杯を完全優勝して賞金の上乗せに成功、獲得賞金ランキングも6位に浮上しその勢いに乗って寬仁親王牌に臨んだが、残念ながら準決で眞杉匠-吉田拓矢の関東2段駆けを乗り越えることができず7着と敗れてしまった。それでも4日目特別優秀では最終ホームで前団を一気に叩いて主導権を握り、上がり9秒4の好タイムで逃げ切った。競輪祭はGI初優勝を飾った好相性の大会であり、今年もGIを制覇しての地元・平塚のグランプリ出場を狙う。
松浦悠士がGI制覇してのグランプリ出場を目指す
松浦悠士は7月のサマーナイトフェスティバルを新鋭・犬伏湧也の逃げに乗って優勝しているが、今年はまだGIの優勝はない。それでも2月の全日本選抜と8月のオールスターで準優勝、10月の寬仁親王牌で決勝3着、3月のウィナーズカップと9月の共同通信社杯でも優出と相変わらず安定性は抜群で、獲得賞金ランキングは堂々の2位だ。もちろん本人はそれで納得しているわけはなく、今年もずっと好調を維持しているだけにGIを優勝してのグランプリ出場が一番の目標であり、ラストチャンスの今回こそはと強い気持ちで臨んでくるだろう。
清水裕友は3月のウィナーズカップを優勝、5月の日本選手権でも優出しているが、その後はビッグレースでの優出がなくなり、獲得賞金ランキングも当落線上ぎりぎりの9位まで落ちてしまい近況は弱音のコメントも見受けられるようになった。しかし、寬仁親王牌も準決で敗れたが、初日理事長杯は1着、2日目ローズカップは新田祐大の逃げを捲って3着で松浦悠士が1着、調子は決して悪くない。松浦との兼ね合いもあるが、やはり清水は自力で動いたほうが力を発揮できるはずで、今回も積極的な走りを期待したい。
平原康多は寬仁親王牌決勝では6着に敗れ連覇はならなかったが、二次予選Aでは吉田有希の番手をいったんは山田英明に取られながらもしっかり奪い返して1着、逃げた吉田を3着に残す万全の走りを見せている。準決も坂井洋の番手で山崎賢人に絡まれたが、貫禄の走りで番手を死守して1着だ。拓矢と有希の吉田兄弟、眞杉匠、坂井洋と関東は強力な機動力が揃っているだけにライン的には平原が最も有利な位置にいると言ってよく、今回も後輩たちと好連係を決めて勝ち上がっていくだろう。
グランプリ初出場を目指して奮闘中の山田庸平は共同通信社杯では一次予選を1着1通過するも二次予選Aで落車して途中欠場、寬仁親王牌でも初日特別選抜予選で落車に見舞われ、二次予選Bは3着で敗退した。獲得賞金ランキングも9位から10位へ落ちてしまった。それでも3日目特選では対戦相手がやや軽めだったとはいえ、3番手から捲って上がりタイムは9秒3と大会の一番時計をマークしておりツボにはまったときのスピードは一級品だ。今回もまずは決勝進出を目指し、一戦一戦を勝負駆けで挑んでくるだろう。
北津留翼が地元バンクで再び輝きを放つ
競輪祭といえば忘れていけないのが北津留翼だ。2017年の決勝では優勝は上がりタイム10秒6で捲った新田祐大だったが、北津留も10秒7で捲って準優勝だった。その後は3年間不参加だったが、昨年の一次予選1は11秒0の捲りで1着、二次予選Aは平原康多の捲りを抑えての逃げ切り、準決は眞杉匠の逃げを捲った新田祐大を捲り切り、園田匠が1着、北津留が2着で地元ファンの大歓声を受けた。今年も地元バンクで高速捲りを連発して大会を大いに盛り上げるとともに念願のGI初制覇も十分に期待できるだろう。
吉田有希は3月のウィナーズカップでビッグレースデビューしたばかりだが、10月の寬仁親王牌では初の準決進出と期待どおりの活躍を見せてくれた。一次予選は捲って1着で神山拓弥とワンツー、二次予選Aは平原康多-諸橋愛を連れて逃げて平原が1着、諸橋が2着で、吉田も3着に粘り込んでいる。準決は2周先行に出て主導権を取り切るも新田祐大に捲られて9着に終わったが、若手は敗戦を糧に成長していくものであり、今回も少しだけ逞しくなった吉田の積極果敢な走りが見られるだろう。
犬伏湧也はビッグレースデビューとなった7月のサマーナイトフェスティバルではいきなりの決勝進出を果たしたが、8月のオールスターでは一次予選1で1着も1次予選2で落車して途中欠場、9月の共同通信社杯でも一次予選は上がりタイム10秒9で見事に逃げ切っているが、二次予選Aで失格と不運が続いてしまった。それでも10月の松山記念では優出はならなかったが4日間逃げて相変わらずの強さを発揮しており、吉田有希と並ぶ輪界期待の大型新人だけに今回こそは順調な勝ち上がりを期待したい。
2018年 第60回大会 浅井康太
浅井康太が7年ぶり3度目のGI制覇
脇本雄太-柴崎淳-浅井康太の中近ラインが前受け、平原康多-諸橋愛の関東コンビが4番手で単騎の菅田壱道が続き、太田竜馬-香川雄介-清水裕友の中四国ラインが後方待機で周回を重ねる。赤板手前から太田がゆっくり上昇するが、それを確認した脇本が1コーナーで誘導員を下ろして突っ張る構えを見せる。すると太田はあっさりと車を下げ、太田の上昇を追わなかった清水が7番手に収まり、太田が8番手まで下がったところで打鐘を迎える。と同時にいったんペースを緩めていた脇本が先行態勢に入り、平原が4番手、清水が7番手の一本棒で最終ホームを通過する。2コーナーから平原が捲りを打ち、番手の柴崎に並びかけると柴崎がブロック、それでも平原は止まらず2センターで柴崎がもう一度牽制にいく。すると空いたインへ浅井が突っ込み脇本を追う。平原は伸びきれず、浅井がゴール前で脇本を交わして3度目のG1制覇。逃げ粘った脇本が2着、捲り追い込んできた清水が3着に入る。
表彰
バンクの特徴
走りやすさを追求した無風の高速バンク
周長は400m、最大カントは34度0148秒、見なし直線距離は56.9m。1998年にグリーンドーム前橋に次ぐ2番目のドーム競輪場としてリニューアルオープンした小倉バンクは、全国の競輪場のデータをもとに走りやすさを追求して設計された国内でも有数の高速バンクで、天候に左右されることなく常にベストの状態で戦えるのが最大の特徴だ。
昨年の男子のレースの決まり手を見てみると、全60レースのうち1着は逃げが8回、捲りが20回、差しが32回、2着は逃げが6回、捲りが14回、差しが15回、マークが25回となっている。
やはり無風の高速バンクなので捲りが優勢だが、先手ラインの選手が1位を取ったレースが21回と先行選手もかなり健闘している。5日目11Rの準決では新山響平が逃げ切りで決勝進出を果たし、翌日の決勝でも逃げ粘りの2着で準優勝している。新山は一昨年の大会でも優出はならなかったが3度逃げ切っており小倉バンクとの相性がいい。
昨年の一番時計11秒9で、2日目と3日目に出ている。2日目3Rの一次予選1では黒沢征治の逃げを中川誠一郎が5番手から捲り切るが、松井宏佑の捲りに乗ってきた守澤太志が最後の直線で中割り強襲を決めて10秒9だ。追い込みはもちろん番手有利が基本だが、5、6番手あたりから大外を伸びてきた選手やインに突っ込んでゴール前で中割りを決めた選手が連に絡んで好配当というケースがよく見られる。昨年の決勝も最終4角で6番手だった吉田拓矢がイエローライン上を捲り追い込み11秒0の好タイムでGI初優勝を飾っている。3日目8Rの一次予選2では山田庸平が8番手と後手に回されたが、最終バックから仕掛けて3番手まで追い上げ、そこから直線鋭く伸びて先捲りの郡司浩平を交わし10秒9をマークしている。
ちなみに昨年の女子の一番時計は11秒8で、児玉碧衣が予選1と決勝で、柳原真緒が予選2で、小林優香が決勝でそれぞれマークしている。