第42回共同通信社杯競輪が10年ぶりに富山競輪場で開催される。4日制のGIIだが、他のビッグレースとは違ってシードレースの特別選抜予選や、準決勝へフリーパスとなる優秀競走などはなく、出場選手全員が一次予選、二次予選、準決勝を経て決勝へと勝ち上がる。一次予選と二次予選は自動番組編成で、一次予選は選考順位によって各レースに振り分けられ、二次予選は一次予選の着順によって自動的に振り分けられる。そのため、他のビッグレースでは見られないような組み合わせを楽しめるのが特徴だ。また、未来のスター選手を目指す登竜門という位置付けもあり、若手選手が多く選抜される大会となっている。
GI初優勝の犬伏湧也が今回も優勝の筆頭だ

8月のオールスターは2日目のドリームレースで大量落車が発生し、波乱の幕開けとなったが、四国勢から9人が準決勝に進出。そのうち4人が決勝へ勝ち上がり、徳島の犬伏湧也が20年ぶりに四国へGIタイトルをもたらした。逆に精彩を欠いていたのが古性優作、脇本雄太、寺崎浩平らの近畿勢で、ドリームレースでの落車のダメージが残っていた眞杉匠と吉田拓矢の関東コンビも、もう一息という印象だった。犬伏率いる四国勢の進撃がこの先も続くのか、近畿勢や関東勢が反撃に転じるのか。今回はGIIだが、競輪ファンなら決して見逃すことのできない4日間となるだろう。
犬伏湧也は7月のサマーナイトフェスティバル決勝で石原颯との連係となり一番人気に推されていたが、石原の逃げに乗って番手捲りを打つも、ゴール前で吉田拓矢に交わされて5着と悔しい結果に終わった。しかし、オールスター決勝では再び石原との連係。4人結束の四国ラインは分断されたものの、石原の捲りにスピードをもらった犬伏が、同じく番手捲りの吉田を捕らえてGI初優勝を飾った。上がりタイムも10秒8と文句なし。今やスピードスターの頂点に上り詰めた犬伏が、今回も優勝候補の筆頭だ。

石原颯はサマーナイトフェスティバルでGII初優出、オールスターでGI初優出と、「破竹の勢い」という言葉がぴったりの急成長ぶりだ。オールスターでは二次予選は打鐘からカマして逃げ切り、ラインで上位を独占。準々決勝Aでは眞杉匠や中野慎詞らを相手に、やはり打鐘からカマして松本貴治が1着、石原が2着のワンツー。準決勝も古性優作、深谷知広らを相手に逃げ切って清水裕友とワンツーと、中四国勢への貢献度が高い。さすがに決勝では思いどおりに主導権を取れなかったが、犬伏湧也の優勝に貢献しており、今回も中四国勢を力強く引っ張っていく。

オールスターでは中国勢からただひとり清水裕友が優出したが、四国勢に割って入ることはできず、決勝は4着に終わった。残念だったのは松浦悠士だ。ドリームレースは1着、シャイニングスター賞は太田海也の逃げを追走して2着と好調だったが、準決勝では捲りにいった太田を眞杉匠が大きくブロックし、そのあおりを受けた松浦は事故入で7着に終わっている。中四国勢は機動力が豊富で、松浦はとくに犬伏湧也との相性がいい。組み合わせ次第では、十分に優勝を狙えるだろう。
吉田拓矢が関東勢を率いて巻き返しを狙う

吉田拓矢はサマーナイトフェスティバル決勝で犬伏湧也の捲りを追走し、同大会初優勝を飾った。しかし、オールスター決勝では眞杉匠の逃げに乗って番手捲りを打つも、ハイスピードの犬伏の捲りに対処できず2着に終わった。4走して勝ち星がなく、ドリームレースでの落車の影響が残っていた印象はあるが、それでも準決勝では、後手を踏まされながらも6番手から捲った坂井洋にスピードをもらって2着と、さすがの走りを見せている。今回は不出場の眞杉匠に代わり、吉田が関東のエースとして巻き返しを狙ってくる。

関東勢は優出した眞杉匠と吉田拓矢のほかにも4人が準決勝までコマを進めており、眞杉不在の穴を埋めるに十分な戦力が揃っている。杉浦侑吾は一次予選が捲りの2着、準々決勝Bは逃げの2着。準決勝は8着だったが、先行して眞杉の1着に貢献した。坂井洋は二次予選で菊池岳仁の逃げに乗って1着、準決勝は吉田の前回りで吉田の勝ち上がりに貢献。森田優弥は今期S級2班ながら一次予選と二次予選を捲りで快勝し、二次予選では上がり10秒6をマークしている。
地元地区の選手が活躍すれば、開催は大いに盛り上がる。

今回も中部勢の奮起に期待したい。10年前の富山・共同通信社杯では、岐阜の竹内雄作が堂々と逃げ切ってビッグレース初優勝を飾っている。共同通信社の推薦枠で出場予定の石川・小堺浩二は2023年4月のFIで8秒9の上がりタイムを記録して当時のバンクレコードを更新。その記録を2025年の記念開催で8秒8に更新したのが岐阜の山口拳矢だ。近況はやや元気のない中部勢だが、富山バンクでは決して侮れない存在となるだろう。

郡司浩平はオールスターのドリームレースで失格となり、そのレースでは大量落車が発生した。直前の小田原記念で今年初優勝を飾り、調子が上向いていただけに痛い結果となった。オールスター終了時点の獲得賞金ランキングでは8位にとどまっているが、上位争いは予断を許さない。今回は気持ちを切り替えて優勝を狙ってくるだろう。深谷知広も南関東勢では唯一の準決勝進出だったが、6着に敗れて優出ならず。南関東勢のさらなる奮起にも期待したい。
古性優作がファンの期待に応える走りを誓う

オールスターの近畿勢では、優出したのは古性優作だけだった。その古性も4走して2着以内が一度もなく、本来の力を発揮できたとは言い難い内容だった。決勝後には「あの展開ならジカで競りにいったほうがよかったかも…」と振り返っている。今回までにどこまで立て直してくるか。ファンの期待に応える強い走りを見せてくれるはずだ。
落車・欠場明けの寺崎浩平は、オリオン賞が逃げて8着。二次予選は菊池岳仁の先行で7番手となり、捲り不発の8着と厳しい結果だった。一方、5日目特選は8番手からの捲り、6日目優秀も7番手からの捲りで連勝。脇本雄太も同様に、レースの流れに乗ってスピードを殺さず仕掛けられれば無類の破壊力を発揮できる。近畿勢の巻き返しに期待したい。

北日本勢は4人が準決勝までコマを進め、ただひとり決勝へ勝ち上がった守澤太志が3着と健闘した。新山響平は準決勝8着だったが、二次予選ではこれぞ新山という突っ張り先行で押し切っている。その新山と準々決勝Aで連係したのが菅田壱道。菅田は3番手回りだったが、新山が山崎賢人に叩かれる苦しい展開から内を突き、中割りで2着に突っ込んだ。北日本勢の近況のムードは決して悪くない。あと一歩踏み出せれば、ビッグレース制覇も十分にあり得るだろう。

九州勢は3人が準決勝へコマを進めたものの、優出はならなかった。準決勝は山崎賢人-嘉永泰斗-小岩大介の並びだったが、杉浦侑吾に叩かれて巻き返せずに終わった。それでも山崎はオールスターの4走すべてで主導権を取るなど、相変わらず積極性は高い。一次予選は山崎が2着、荒井崇博が1着のワンツー。二次予選は1着入線の山田庸平が内側追い抜きで失格となり、山崎が繰り上がり1着。準々決勝Aは佐々木豪を連れて逃げ、山崎は4着だったが佐々木が1着となった。今回も九州勢を連れて積極的に攻めてくれるだろう。
プレイバック 2021年 第37回大会 山口拳矢

郡司浩平-鈴木裕の南関東コンビが前受け、単騎の清水裕友が続き、4番手に平原康多-杉森輝大の関東コンビ、その後ろに単騎の山口拳矢、7番手に新山響平-新田祐大-守澤太志の北日本トリオという並びで周回を重ねる。青板までは動きがなく淡々と進むが、赤板前で郡司が誘導との車間を空け始めると山口が内から上がって清水の後ろに入る。続いて郡司が誘導を交わして先行態勢に入ると、今度は清水が上がり、郡司を内からすくって前へ出る。そこへ新山がカマしてきて、打鐘とともに清水を叩いて主導権を握った。
叩かれた清水は最終ホームで北日本の3番手を取りにいくが、守澤にさばかれて後退。そこへ最終2コーナーから地元の山口が捲り発進する。山口は一気に2番手の新田の横まで迫り、3コーナーで新田がブロックするも止まらない。最後の直線でも牽制を乗り越えて先頭でゴールインし、GII初優勝を達成。山口を追ってきた平原が2着、鈴木が3着に入った。
富山バンク 小回りの333m、捲りも十分に届く

周長333m、最大カント33度41分24秒、見なし直線距離43.0m。小回りの333mバンクながら、見なし直線は比較的長く、先行一辺倒というよりも、展開次第では捲りも十分に届く。
2025年の記念開催では、決勝で山口拳矢が犬伏湧也の先行を4番手から捲って優勝。上がり8秒8をマークし、バンクレコードを更新した。
小回りバンクだけに仕掛けは早くなりやすく、勝負どころで好位置を確保できるかが大きなポイントとなる。青板から赤板にかけて各ラインが位置を取り合い、打鐘前後で主導権争いが本格化する展開も多い。後方に置かれてからの巻き返しは容易ではなく、捲りを狙う選手にとっても中団確保が重要になるだろう。
また、富山はバックからセンターにかけて走路幅が比較的狭く、直線でのコース取りも勝敗を左右する。自力型のスピードだけでなく、位置取りと仕掛けのタイミングにも注目したい。